ワールドワイドウェブとは?仕組みなどをわかりやすく解説

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ワールドワイドウェブ(World Wide Web、WWW)は、インターネット上でハイパーテキストドキュメントを公開・閲覧するための情報システムである。




ワールドワイドウェブの歴史

ワールドワイドウェブの誕生は、1989年にさかのぼる。当時、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)で働いていたイギリスの計算機科学者ティム・バーナーズ=リー(Tim Berners-Lee)が、世界中の研究者間で情報を効率的に共有する手段として考案したのが始まりである。

1989年:構想の発表 バーナーズ=リーは「Information Management: A Proposal」という文書を発表し、ハイパーテキストを用いた情報管理システムの構想を提示した。この提案は当初、上司からは「曖昧だが魅力的」と評価されたものの、すぐには承認されなかった。

1990年:世界初のWebブラウザとWebサーバーの開発 バーナーズ=リーは、NeXTコンピュータ上で世界初のWebブラウザ「WorldWideWeb」(後に「Nexus」と改名)を開発した。同時に、世界初のWebサーバー「CERN HTTPd」も作成し、1990年12月20日には世界初のWebサイト「info.cern.ch」を公開した。

1991年:一般公開とHTMLの標準化 1991年8月6日、バーナーズ=リーはalt.hypertextニュースグループでワールドワイドウェブプロジェクトの概要を発表し、一般に公開した。同年、HTML(HyperText Markup Language)の最初の仕様も公開され、Webページの記述言語として標準化が始まった。

1993年には、CERN がワールドワイドウェブの技術を無償で一般公開すると発表し、これが爆発的な普及の契機となった。同年、イリノイ大学のNCSA(National Center for Supercomputing Applications)が開発したブラウザ「Mosaic」が公開され、グラフィカルユーザーインターフェースを備えた初の実用的なWebブラウザとして広く使用されるようになった。

1994年にはバーナーズ=リーがW3C(World Wide Web Consortium)を設立し、Web技術の標準化と発展を統括する組織を確立した。1995年頃からは商用インターネットプロバイダーが急速に拡大し、企業や個人によるWebサイトの構築が本格化した。

ワールドワイドウェブの仕組み

ワールドワイドウェブは、クライアントサーバーモデルを基盤とした分散型のハイパーメディアシステムである。その基本的な仕組みは、Webブラウザ(クライアント)とWebサーバー間でのHTTP通信によって実現されている。

ハイパーテキストとハイパーリンク ワールドワイドウェブの最も重要な特徴は、ハイパーテキストの概念を実装していることである。ハイパーテキストとは、テキスト内に他の文書や情報源への参照(ハイパーリンク)を埋め込み、非線形的な情報へのアクセスを可能にする仕組みである。ユーザーはリンクをクリックすることで、関連する情報に瞬時にアクセスできる。

URI(Uniform Resource Identifier)による統一的な資源識別 ワールドワイドウェブ上のすべての資源は、URIによって一意に識別される。URIの最も一般的な形式がURL(Uniform Resource Locator)であり、「http://example.com/page.html」のような形式でWebページの場所を指定する。URIによって、世界中のどこにある資源でも統一的な方法でアクセスできる。

HTML、CSS、JavaScriptによる文書構造化 Webページは主にHTML(HyperText Markup Language)で記述され、文書の構造と内容を定義する。CSS(Cascading Style Sheets)は文書の見た目やレイアウトを制御し、JavaScriptは動的な動作やインタラクションを実現する。これらの技術が組み合わされることで、リッチなWebコンテンツが作成される。

クライアントサーバー間の通信プロセスは次のように行われる。まず、ユーザーがWebブラウザでURLを入力するか、リンクをクリックすると、ブラウザはDNS(Domain Name System)を使用してドメイン名をIPアドレスに変換する。その後、指定されたWebサーバーに対してHTTPリクエストを送信し、サーバーはリクエストされたリソースをHTTPレスポンスとして返す。ブラウザは受信したHTMLファイルを解析し、必要に応じてCSSファイルや画像ファイルなどの追加リソースを取得して、最終的にWebページを表示する。

ワールドワイドウェブのプロトコル

ワールドワイドウェブの動作を支える中核的な技術がHTTP(HyperText Transfer Protocol)である。HTTPは、Webブラウザとサーバー間でデータを転送するためのアプリケーションプロトコルであり、ワールドワイドウェブの基盤技術として機能している。

HTTP/1.0からHTTP/3への進化 HTTPは1991年にHTTP/0.9として始まり、その後継続的に改良が加えられてきた。HTTP/1.0(1996年)では、リクエスト・レスポンスごとにTCP接続を確立する単純なモデルが採用されていた。HTTP/1.1(1997年)では、持続的接続(Keep-Alive)、パイプライン化、チャンク転送エンコーディングなどの機能が追加され、効率性が大幅に向上した。HTTP/2(2015年)では、多重化によって単一のTCP接続で複数のリクエストを並列処理できるようになり、ヘッダー圧縮やサーバープッシュ機能も導入された。最新のHTTP/3(2022年)では、UDPベースのQUIC(Quick UDP Internet Connections)プロトコルを使用し、より高速で信頼性の高い通信を実現している。

HTTPSとセキュリティ HTTPSは、HTTP over SSL/TLSの略称であり、HTTPにSSL/TLS暗号化を適用したセキュアな通信プロトコルである。HTTPSでは、クライアントとサーバー間の通信がすべて暗号化されるため、第三者による盗聴や改ざんを防ぐことができる。現在では、個人情報やクレジットカード情報を扱うWebサイトではHTTPS対応が必須となっており、Google等の検索エンジンもHTTPS対応サイトを検索結果で優遇している。

RESTful APIとHTTPメソッド RESTアーキテクチャは、HTTPプロトコルの特性を活かしたWeb APIの設計原則である。RESTfulなAPIでは、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE等)を適切に使い分けることで、リソースに対する操作を明確に表現する。GETは情報の取得、POSTは新しいリソースの作成、PUTは既存リソースの更新、DELETEはリソースの削除を表す。この設計により、APIの動作が予測しやすくなり、開発効率が向上する。

HTTPの動作原理を詳しく見ると、まずクライアントが「HTTPリクエスト」を送信する。このリクエストには、リクエストライン(メソッド、URI、HTTPバージョン)、ヘッダーフィールド(ホスト名、ユーザーエージェント、コンテンツタイプ等)、必要に応じてメッセージボディが含まれる。サーバーは受信したリクエストを処理し、「HTTPレスポンス」を返す。レスポンスには、ステータスライン(HTTPバージョン、ステータスコード、理由フレーズ)、レスポンスヘッダー、レスポンスボディが含まれる。

ステータスコードは、リクエストの処理結果を示す3桁の数字であり、200(OK)、404(Not Found)、500(Internal Server Error)などがある。これらのコードによって、クライアントは適切な後続処理を決定できる。

ワールドワイドウェブとインターネットの違い

ワールドワイドウェブとインターネットは密接に関連しているが、本質的に異なる概念である。この違いを理解することは、IT技術の全体像を把握する上で重要である。

インターネット:物理的・論理的インフラストラクチャ インターネットは、世界中のコンピューターネットワークを相互接続した巨大な通信インフラストラクチャである。TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコルスイートを基盤として、異なるネットワーク間でデータの送受信を可能にする。インターネットは、物理的な通信回線(光ファイバー、衛星回線、無線通信等)と、データの転送・ルーティングを行う各種プロトコルから構成される。ISP(Internet Service Provider)、バックボーンネットワーク、ルーター、スイッチなどの物理的・論理的コンポーネントによって支えられている。

ワールドワイドウェブ:アプリケーション層のサービス ワールドワイドウェブは、インターネットインフラストラクチャ上で動作するアプリケーション層のサービスである。HTTPプロトコルを使用してWebサーバーとクライアント間でハイパーテキストドキュメントを交換し、HTMLで記述されたWebページを表示する。ワールドワイドウェブは、インターネットが提供する通信機能を利用して実現される上位レイヤーのアプリケーションといえる。

他のインターネットサービスとの共存 インターネット上では、ワールドワイドウェブ以外にも多数のサービスが稼働している。電子メール(SMTPPOP3IMAP)、ファイル転送(FTP、SFTP)、リモートアクセスSSH、Telnet)、ドメイン名解決(DNS)、時刻同期(NTP)、ネットワーク管理(SNMP)など、それぞれ異なるプロトコルとポート番号を使用して動作している。これらのサービスは、同一のインターネットインフラストラクチャ上で並行して動作する。

階層的な観点から見ると、インターネットは主にOSI参照モデルの下位層(物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層)を担当し、ワールドワイドウェブは上位層(セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層)に位置する。インターネットは「どのようにデータを送るか」という通信方法を定義し、ワールドワイドウェブは「どのような情報を送るか」という内容とその表現方法を定義する。

また、歴史的経緯も異なる。インターネットの起源は1960年代のARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)に遡り、当初は軍事・学術目的の研究ネットワークとして発展した。一方、ワールドワイドウェブは1989年にCERNで誕生し、情報共有を目的として開発された比較的新しい技術である。

現代のIT環境では、多くの人がインターネットとワールドワイドウェブを同義語として使用しているが、技術的には明確に区別される概念である。インターネットは通信基盤であり、ワールドワイドウェブはその上で動作するアプリケーションサービスの一つという関係性を理解することが重要である。

まとめ

ワールドワイドウェブは、1989年にティム・バーナーズ=リーによって発明された革新的な情報システムであり、現代のデジタル社会の基盤となっている。HTML、HTTP、URIという3つの基本技術によって構築され、ハイパーテキストの概念を実装することで、世界中の情報に非線形的にアクセスできる環境を実現した。

インターネットという通信インフラストラクチャ上で動作するアプリケーション層のサービスとして、ワールドワイドウェブは情報の民主化と知識の共有を促進してきた。HTTPプロトコルの継続的な発展により、より高速で安全な通信が可能になり、現在では単なる文書共有システムを超えて、Webアプリケーション、電子商取引、ソーシャルメディアクラウドサービスなど、多様なデジタルサービスの基盤として機能している。

技術的な観点から見ると、ワールドワイドウェブは分散型システムの成功例として、スケーラビリティ、相互運用性、標準化の重要性を示している。W3Cによる継続的な標準化活動により、異なるベンダーのブラウザやサーバーが協調して動作し、グローバルな情報エコシステムを形成している。

今後のワールドワイドウェブは、セマンティックWeb、プログレッシブWebアプリケーション、WebAssembly、分散型Web(Web3)などの新技術により、さらなる発展が期待されている。これらの技術は、Webをより知的で、高性能で、分散化された情報システムへと発展させる可能性を秘めている。

ITリテラシーの高い技術者にとって、ワールドワイドウェブの基本原理と発展の歴史を理解することは、現代のWeb技術を効果的に活用し、将来の技術動向を予測する上で不可欠である。特に、HTTPプロトコルの詳細な仕様や、インターネットとワールドワイドウェブの階層的な関係を把握することで、より堅牢で効率的なWebシステムの設計・構築が可能になる。

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