TCPとは?特徴や仕組みなどをわかりやすく解説

TCP(Transmission Control Protocol)は、インターネット上で標準的に使用される通信プロトコルである。




TCPの特徴

TCPは、以下のような特徴を持つ信頼性の高い通信プロトコルである。

1. コネクション型通信

TCPは、通信を行う前に送信側と受信側が3ウェイハンドシェイクと呼ばれる方法で接続を確立する。この接続は、仮想的な通信路のようなもので、データはこの通信路を通じてやり取りされる。通信が完了すると、接続は切断される。

2. 信頼性が高い

TCPは、データが確実に相手に届くように、様々な仕組みを備えている。例えば、受信側がデータを受け取ると、送信側に確認応答 (ACK) を返す。送信側は、一定時間内にACKを受信できない場合、データの再送を行う。また、データが順番通りに届くように、シーケンス番号を付与して管理する。

3. 全二重通信が可能である

TCPは、送信側と受信側が同時にデータを送受信できる全二重通信をサポートしている。これは、電話のように、双方向で同時に会話ができるのと同じである。

4. フロー制御を行う

TCPは、受信側の処理能力を超えないように、送信側がデータ送信量を調整するフロー制御機能を持つ。これにより、受信側がデータを受け取れずに破棄してしまうことを防ぐ。

5. 輻輳制御を行う

TCPは、ネットワークの混雑状況に応じて、送信側がデータ送信量を調整する輻輳制御機能を持つ。これにより、ネットワーク全体の通信効率を向上させる。

これらの特徴により、TCPは、Webブラウジング、電子メール、ファイル転送など、信頼性が求められる様々なアプリケーションで広く利用されている。

TCPの仕組み

TCPは、以下のような仕組みで信頼性の高い通信を実現している。

1. 3ウェイハンドシェイクによる接続確立

TCP通信は、まず送信側と受信側が3ウェイハンドシェイクと呼ばれるプロセスで接続を確立することから始まる。これは、互いの通信準備状況を確認し合うための手順である。

  • 送信側が受信側にSYNパケットを送信し、接続開始を要求する。
  • 受信側は、SYNパケットを受け取ると、SYN/ACKパケットを送信側へ返し、接続要求を受諾する。
  • 送信側は、SYN/ACKパケットを受け取ると、ACKパケットを受信側へ返し、接続確立を通知する。

2. データの分割とシーケンス番号

送信するデータは、セグメントと呼ばれる単位に分割される。各セグメントにはシーケンス番号が付与され、受信側はこの番号をもとにデータの順序を正しく並べ替える。

3. 確認応答と再送制御

受信側は、セグメントを正しく受信すると、送信側にACKパケットを送信する。ACKパケットには、次に受信を期待するセグメントのシーケンス番号が含まれる。送信側は、ACKパケットを受信することで、データが正しく届いたことを確認できる。

もし、一定時間内にACKパケットを受信できない場合、送信側は該当するセグメントを再送する。これにより、データの欠落や破損を防ぐ。

4. フロー制御と輻輳制御

TCPは、受信側の処理能力を超えないように、送信側がデータ送信量を調整するフロー制御機能を持つ。また、ネットワークの混雑状況に応じて送信量を調整する輻輳制御機能も備えている。これらの制御により、ネットワーク全体の通信効率を向上させる。

5. 4ウェイハンドシェイクによる接続切断

通信が終了すると、送信側または受信側がFINパケットを送信し、接続切断を開始する。その後、FINパケットを受け取った側はACKパケットを返し、最終的に双方がFINパケットとACKパケットを交換することで接続が切断される。

これらの複雑な仕組みによって、TCPは、パケットの損失や遅延、重複といった問題が発生しやすいインターネット環境においても、信頼性の高いデータ通信を実現している。

TCPの用途

TCPは、その信頼性の高さから、インターネット上で様々な場面で利用されている。代表的な用途は以下の通りである。

1. Webブラウジング

Webページの閲覧やファイルダウンロードには、HTTP(S)プロトコルが用いられるが、その基盤となるトランスポートプロトコルとしてTCPが使用されている。Webページの表示に必要なHTMLファイルや画像、動画などのデータは、TCPによって確実に転送される。

2. 電子メールの送受信

電子メールの送受信には、SMTPPOP3、IMAPといったプロトコルが用いられるが、これらのプロトコルもTCPを基盤としている。メール本文や添付ファイルは、TCPによって確実に相手に届けられる。

3. ファイル転送

FTP (File Transfer Protocol) は、ファイルの転送に特化したプロトコルであり、TCPをベースに動作する。大容量のファイルであっても、TCPの信頼性により、エラーなく転送することができる。

4. リモートログイン

SSH (Secure Shell) やTelnetといったリモートログインのプロトコルも、TCP上で動作する。これらのプロトコルは、遠隔地のコンピュータに安全にログインし、操作することを可能にする。

5. その他のアプリケーション

上記以外にも、データベースへのアクセス、オンラインゲーム、音声通話、動画ストリーミングなど、様々なアプリケーションがTCPを利用している。これらのアプリケーションは、TCPの信頼性によって、安定した通信を実現している。

このように、TCPはインターネット上の様々なサービスにおいて、欠かせない役割を担っている。

TCPとUDPの違い

TCPとUDPは、どちらもインターネット上で使用される主要なトランスポート層プロトコルであるが、その特性は大きく異なる。主な違いは以下の通り。

特徴 TCP UDP
コネクション型 ○ (3ウェイハンドシェイクによる接続確立) × (コネクションレス)
信頼性 ○ (確認応答、再送制御、順序制御) × (信頼性よりもリアルタイム性を重視)
順序制御 ×
フロー制御 ×
輻輳制御 ×
ヘッダーサイズ 20バイト以上 8バイト
用途 Webブラウジング、電子メール、ファイル転送、リモートログインなど ストリーミング動画、音声通話、オンラインゲーム、DNSクエリなど

1. コネクションの有無

TCPはコネクション型プロトコルであり、通信前に送信側と受信側が接続を確立する必要がある。これにより、データの信頼性と順序性を保証するが、通信開始までに時間がかかるというデメリットもある。

一方、UDPはコネクションレス型プロトコルであり、接続確立の手順を踏まずにデータを送信できる。そのため、リアルタイム性が求められる通信に向いているが、データの信頼性や順序性は保証されない。

2. 信頼性

TCPは、確認応答や再送制御、順序制御などの仕組みを備えており、データの信頼性を重視する。そのため、Webブラウジングやファイル転送など、データの欠落や破損が許容されない用途に適している。

UDPは、信頼性よりもリアルタイム性を重視するため、データの欠落や破損が発生する可能性がある。ただし、音声通話や動画ストリーミングなど、多少のデータ欠落があっても問題ない用途では、UDPのリアルタイム性が活かされる。

3. ヘッダーサイズ

TCPのヘッダーは20バイト以上であるのに対し、UDPのヘッダーはわずか8バイトである。そのため、UDPはTCPよりもオーバーヘッドが少なく、効率的な通信が可能である。

4. 用途

TCPは、Webブラウジング、電子メール、ファイル転送、リモートログインなど、信頼性が必要な通信に利用される。

UDPは、ストリーミング動画、音声通話、オンラインゲーム、DNSクエリなど、リアルタイム性が重要な通信に利用される。

TCPとTCP/IPの違い

 TCP/IP (Transmission Control Protocol/Internet Protocol) は、TCPとIPを中心とした、複数のプロトコルの集合体である。インターネットの基盤を支えるプロトコルスイートであり、異なるネットワーク間での通信を可能にする。TCP/IPは、OSI参照モデルのネットワーク層、トランスポート層、アプリケーション層にまたがるプロトコル群で構成されており、IP、TCP、UDP、HTTPFTPSMTPなど、様々なプロトコルが含まれる。
TCPは単一のプロトコルであるに対し、TCP/IPは複数のプロトコルからなるプロトコルスイートであるという点で区別される。

まとめ

TCPは、インターネット上で信頼性の高いデータ通信を実現するための重要なプロトコルである。コネクションの確立、順序制御、エラー検出、再送などの機能により、データが確実に相手に届くようにする。TCPは、Webブラウジング、電子メール、ファイル転送など、さまざまなアプリケーションで広く利用されており、インターネットの基盤を支える重要な役割を果たしている。

TCPとUDPは、それぞれ異なる特徴を持つプロトコルである。信頼性が必要な場合はTCPを、リアルタイム性が重要な場合はUDPを選択することが重要である。また、TCPは単一のプロトコルであるのに対し、TCP/IPは複数のプロトコルからなるプロトコルスイートである。これらの違いをことを理解することで、ネットワークの仕組みをより深く理解することができるだろう。

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