PWA(Progressive Web Apps)は、Web技術を用いて開発される、ネイティブアプリに近いユーザー体験を提供するアプリケーションである。
従来のWebサイトと異なり、インストール不要、オフライン対応、プッシュ通知機能など、多くの利点を備えている。
PWAのメリット
PWAは、従来のWebサイトと比べて、以下のメリットがある。
インストール不要
PWAは、アプリストアからアプリをダウンロードする必要がなく、ブラウザ上で即座に利用できる。ユーザーにとって、インストールの手間が省けるというメリットがある。
オフライン対応
PWAは、一度アクセスすれば、一部の機能をオフラインでも利用できる。これは、インターネット接続が不安定な環境でも、ユーザーが快適にサービスを利用できるというメリットにつながる。
プッシュ通知機能
PWAは、アプリのようにプッシュ通知を送信できる。これは、ユーザーに最新情報を提供したり、アプリの利用を促進したりするのに有効な手段である。
高速起動
PWAは、アプリケーションキャッシュを使用することで、ネイティブアプリに近い速度で起動する。ユーザーにとって、ストレスのない操作性を実現できるというメリットがある。
開発コストの削減
PWAは、ネイティブアプリと比べて開発コストが低い。これは、開発者や企業にとって、大きなメリットである。
検索エンジンからの流入
PWAは、検索エンジンからの流入を獲得しやすいというメリットがある。これは、PWAがWebサイトとして認識されるため、検索結果に表示されやすくなるためである。
セキュリティ
PWAは、HTTPS通信を必須としているため、高いセキュリティを実現できる。これは、ユーザーにとって、安心安全な利用環境を提供できるというメリットである。
ユーザーエンゲージメントの向上
PWAは、プッシュ通知やオフライン対応などの機能により、ユーザーエンゲージメントの向上に貢献できる。これは、ユーザーのアプリ利用頻度や滞在時間を増加させる効果がある。
データ容量の削減
PWAは、ネイティブアプリと比べてデータ容量が小さいため、ユーザーにとってデータ通信量の節約につながる。
アプリストアの審査不要
PWAは、アプリストアの審査を受ける必要がないため、開発者や企業にとって、時間とコストの削減につながる。
PWAの例
PWAは、様々な企業で導入されている。以下は、その一例である。
PWA版Twitterは、オフラインでもタイムラインの閲覧や投稿が可能である。また、プッシュ通知機能により、最新のツイートを逃さずに確認できる。
Starbucks
PWA版Starbucksアプリは、モバイルオーダーや支払い機能を提供する。また、店舗情報やメニューをオフラインでも閲覧できる。
Tinder
PWA版Tinderは、インストール不要でマッチングやメッセージのやり取りが可能である。また、プッシュ通知機能により、新しいマッチングやメッセージをすぐに確認できる。
PWA版Pinterestは、オフラインでもピンを保存したり、アイデアを整理したりできる。また、プッシュ通知機能により、新しいピンやおすすめコンテンツをすぐに確認できる。
BMW
PWA版BMWアプリは、車のマニュアルや操作方法をオフラインでも閲覧できる。また、プッシュ通知機能により、車のメンテナンス情報や最新ニュースを受け取ることができる。
PWAの実装方法
PWAは、以下の3つのファイルを作成し、Webサイトに配置することで実現できる。
Service Worker
Service Workerは、JavaScriptで記述されたファイルであり、オフライン対応やプッシュ通知などの機能を実現する。Service Workerのファイル名は、service-worker.js
が一般的である。
self.addEventListener('install', (event) => {
event.waitUntil(
caches.open('my-cache').then((cache) => {
return cache.addAll([
'/',
'/index.html',
'/manifest.json',
'/app.js',
'/style.css',
]);
})
);
});
self.addEventListener('fetch', (event) => {
event.respondWith(
caches.match(event.request).then((response) => {
return response || fetch(event.request);
})
);
});
Manifestファイル
Manifestファイルは、JSON形式で記述されたファイルであり、アプリの名前、アイコン、起動時のURLなどの情報を記述する。Manifestファイルのファイル名は、manifest.json
が一般的である。
{
"short_name": "My PWA",
"name": "My Progressive Web App",
"icons": [
{
"src": "/icon.png",
"sizes": "192x192",
"type": "image/png"
}
],
"start_url": "/",
"display": "standalone",
"theme_color": "#000000",
"background_color": "#ffffff"
}
Web App Manifest
Web App Manifestは、W3Cによって策定された標準規格であり、PWAとして登録するための設定を記述する。Manifestファイルと比べて、A2HSやRelated Applicationsなどの機能が追加されている。Web App Manifestのファイル名は、manifest.webmanifest
が一般的である。
{
"short_name": "My PWA",
"name": "My Progressive Web App",
"icons": [
{
"src": "/icon.png",
"sizes": "192x192",
"type": "image/png"
}
],
"start_url": "/",
"display": "standalone",
"theme_color": "#000000",
"background_color": "#ffffff",
"related_applications": [
{
"platform": "play",
"id": "com.example.myapp"
},
{
"platform": "appstore",
"id": "1234567890"
}
]
}
これらのファイルをWebサイトに配置したら、PWAは完成である。PWA対応ブラウザでアクセスすると、ユーザーはアプリとしてPWAをインストールすることができる。
PWA開発の支援ツール
Lighthouse
Lighthouseは、Googleが提供するオープンソースツールであり、PWAの品質を測定できる。Lighthouseは、以下の項目をチェックする。
Lighthouseは、WebサイトのURLを入力することで、簡単に実行できる。
Workbox
Workboxは、Googleが提供するライブラリであり、Service Workerの開発を支援する。Workboxは、以下の機能を提供する。
- キャッシュ管理
- プッシュ通知
- バックグラウンド処理
Workboxを使用することで、Service Workerの開発を効率的に進めることができる。
PWA Builder
PWA Builderは、Microsoftが提供するツールであり、PWAを簡単に作成できる。PWA Builderは、以下の機能を提供する。
- マニフェストファイルの作成
- アイコンの作成
- サービスワーカーの作成
PWA Builderを使用することで、コードを書かずにPWAを作成できる。
その他
上記以外にも、PWAの開発を支援するツールは多数存在する。以下は、その一例である。
- webpack: モジュールバンドラー
- babel: JavaScriptトランスパイラ
- Jest: テストフレームワーク
- PWA.rocks: PWAに関する情報サイト
これらのツールを活用することで、より効率的にPWA開発を進めることができる。
PWAのデメリット
すべての機能が利用できるわけではない
PWAは、Web技術を用いて開発されるため、ネイティブアプリと比べて、利用できる機能が制限される場合がある。例えば、カメラやマイクなどのデバイス機能へのアクセスが制限されることがある。
すべてのブラウザで対応しているわけではない
PWAは、比較的新しい技術であるため、すべてのブラウザで対応しているわけではない。古いブラウザでは、PWAを利用できない場合がある。
アプリストアでの検索にヒットしない
PWAは、アプリストアに登録されていないため、ユーザーがPWAを見つけるのが難しい場合がある。
開発スキルが必要
PWAの開発には、HTML、CSS、JavaScriptなどのWeb開発スキルに加え、Service WorkerなどのPWA特有の技術に関する知識が必要である。
ネイティブアプリと比べてパフォーマンスが劣る場合がある
PWAは、Web技術を用いて開発されるため、ネイティブアプリと比べてパフォーマンスが劣る場合がある。
プッシュ通知機能の制限
PWAは、プッシュ通知機能を提供できるが、ネイティブアプリと比べて制限がある場合がある。例えば、iOSでは、プッシュ通知を送信できるタイミングや頻度に制限がある。
ユーザーへの認知度が低い
PWAは、比較的新しい技術であるため、ユーザーへの認知度が低い。
セキュリティリスク
PWAは、Webサイトとして動作するため、従来のWebサイトと同じように、セキュリティリスクが存在する。
開発コストの増加
PWAは、ネイティブアプリと比べて開発コストが低いというメリットがある一方で、オフライン対応やプッシュ通知機能など、高度な機能を実装するには、開発コストが増加する場合がある。
運用コストの増加
PWAは、ネイティブアプリと比べて運用コストが低いというメリットがある一方で、プッシュ通知配信やサーバー管理など、運用コストが増加する場合がある。
まとめ
PWAは、Webサイトの可能性を広げる技術である。今後、PWAに対応するブラウザやWeb開発フレームワークが増え、さらに多くの企業がPWAを導入していくことが予想される。
しかしながら、PWAはデメリットも存在する。PWAを導入するかどうかは、メリットとデメリットを比較検討した上で、慎重に判断する必要がある。