JWTとは?仕組みやメリットなどをわかりやすく解説

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JWT(JSON Web Token)とは、主に認証と情報交換に用いられ、WebアプリケーションAPIにおけるステートレスなセッション管理を実現する技術である。





JWTの仕組み

JWTは、クライアントサーバー間で情報をやり取りするための、署名された文字列である。この文字列は、改ざんを検知できるようにデジタル署名されており、以下の3つの要素を「.(ドット)」で区切って連結した構造を持っている。

  • ヘッダー (Header)

    • トークンの種類(typ: “JWT”)と、署名に使用されるアルゴリズム(alg: “HS256″や”RS256″など)が記述されたJSONオブジェクトである。

    • このJSONはBase64 URLエンコードされる。

  • ペイロード (Payload)

    • トークンに含める実データ(クレーム; Claims)を格納するJSONオブジェクトである。

    • クレームには、発行者(iss)、発行日時(iat)、有効期限(exp)、利用者ID(sub)などの予約されたクレーム(Registered Claims)や、自由に定義できる公開クレーム(Public Claims)、アプリケーション固有の独自クレーム(Private Claims)を含めることができる。

    • このJSONもBase64 URLエンコードされる。

  • 署名 (Signature)

    • 「Base64 URLエンコードされたヘッダー」と「Base64 URLエンコードされたペイロード」を「.(ドット)」で連結したものに対し、ヘッダーで指定されたアルゴリズムと秘密鍵(シークレット)を用いて計算された値である。

    • この署名によって、トークンの内容が途中で改ざんされていないこと、そしてトークンが正当なサーバーから発行されたものであることを保証する。

この3つの要素が連結されることで、以下のような形式のJWTが生成される。

aaaaa.bbbbb.ccccc

クライアントはこのトークンをリクエストのたびにサーバーへ送信し、サーバーはトークンの署名を検証するだけで、その利用者が誰であるか、そして正当な利用者であるかを即座に判断できる。これがJWTによるステートレスな認証の核心である。


JWTのメリット

JWTを採用することで、従来のセッション管理方式(サーバー側でセッション情報を保持する方式)と比べて、いくつかの際立った利点がもたらされる。これは、Webサービスの設計と運用において、明確な改善と優位性をもたらす。

  • APIの速度向上と負荷の軽減

    • JWTは、必要な情報(利用者IDなど)をトークン自体に含んでいるため、サーバーはリクエストのたびにデータベースや外部ストレージ(Redisなど)に問い合わせてセッション情報を検索する必要がない。

    • この仕組みにより、認証処理の待ち時間が短縮され、APIのレスポンス速度が向上する。また、データベースへのアクセス負荷が大幅に減るため、サーバーリソースの節約に繋がる。

  • マイクロサービス環境での親和性の高さ

    • サービスを分割して複数のサーバー(マイクロサービス)で構成している場合、従来のセッション管理ではセッション情報を共有するための複雑な機構が必要になる。

    • JWTは自己完結型であるため、トークンを受け取ったどのサービスも、秘密鍵さえ知っていればトークンの検証と利用者の識別を独立して行える。これは、サービス間の疎結合性を高め、システム全体の柔軟性が増す結果となる。

  • モバイルやクロスドメインでの活用のしやすさ

    • JWTはHTTPヘッダーやURLパラメータなど、様々な方法で簡単に送信できる単なる文字列である。

    • モバイルアプリケーションや異なるドメイン間で動作するフロントエンド・バックエンドの構成(CORS環境)でも、Cookieの制約を受けずにスムーズに認証情報をやり取りできるため、現代の分散型アプリケーション開発において非常に取り回しが良い。


JWTのアルゴリズム

JWTの署名を作成・検証するために使用される暗号アルゴリズムは、トークンの真正性と完全性を確実にするための根幹部分である。ヘッダーのalgフィールドで指定され、主に対称鍵暗号方式と非対称鍵暗号方式の2種類が使用される。

  • HS256 (HMAC with SHA-256)

    • 対称鍵暗号方式を用いるアルゴリズムである。署名の生成と検証に同じ秘密鍵(シークレット)を使用する。

    • 実装がシンプルで処理が高速だが、秘密鍵をトークンを発行するサーバーと検証するサーバーの両方が知っている必要がある。そのため、単一のサービスや信頼関係のある少数のサービス間でJWTを使用する場合に最も一般的に選ばれる。

    • 鍵の漏洩は致命的であり、強固な秘密鍵の管理がセキュリティ維持の生命線となる。

  • RS256 (RSA Signature with SHA-256)

    • 非対称鍵暗号方式を用いるアルゴリズムである。トークンの署名には秘密鍵を、署名の検証には対応する公開鍵を使用する。

    • この方式の優れた点は、トークンを発行するサーバー(認証サーバーなど)が秘密鍵を厳重に保持する一方で、他のAPIサーバー群は公開鍵を安全に公開して検証に使える点である。

    • マイクロサービスやサードパーティ連携など、信頼境界が明確に分かれているシステムにおいて、鍵の共有リスクを最小限に抑え、高いセキュリティ水準を保つことに貢献する。

  • ES256 (ECDSA Signature with P-256)

    • 楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)を用いる方式である。RS256と同様に非対称鍵暗号を使用するが、RSAに比べて短い鍵長で同等レベルのセキュリティを実現できる。

    • これにより、署名サイズを小さく抑えることができ、全体的なトークンサイズを縮小できる。処理速度も速い傾向があり、特にリソース制約が厳しい環境や、通信量を削減したい場合に有力な選択肢となる。


JWTの実装手順

JWTをシステムに組み込む際の標準的な流れは、以下の4つのステップで構成される。この手順に従うことで、セキュアでステートレスな認証フローを円滑に構築できる。

  • ステップ 1: 認証情報の受け取りとトークンの生成

    • 利用者がユーザー名とパスワードを認証サーバーへ送信する。サーバーはこれらをデータベースで照合し、正当な利用者であることを確認する。

    • 認証が成功した場合、サーバーは利用者のID、権限、有効期限(exp)などのクレームを含むペイロードを作成し、ヘッダーと結合する。

    • そして、指定されたアルゴリズム(例:HS256)とサーバー固有の秘密鍵を用いて署名を計算し、最終的なJWT文字列(Header.Payload.Signature)を生成する。

  • ステップ 2: クライアントへのトークン送付と保持

    • 生成されたJWTは、サーバーからクライアント(ブラウザ、モバイルアプリなど)へレスポンスとして送信される。通常、JSONレスポンスのボディ、あるいはHTTPヘッダー(例:Authorization: Bearer <JWT>)に含めて送られる。

    • クライアントは受け取ったJWTを安全な場所(WebブラウザであればLocalStorage、SessionStorage、またはSecure Cookie)に保存し、今後のすべてのAPIリクエストに添付する準備をする。

  • ステップ 3: トークンの送信とサーバー側での検証

    • クライアントが保護されたリソース(APIエンドポイント)へアクセスする際、保持しているJWTをリクエストヘッダー(Authorization: Bearer)に含めてサーバーへ送信する。

    • リソースサーバー(APIサーバー)は、まず送信されたJWTを受信し、以下の処理を順次実行する。

      1. トークンの構造(3つのセグメント)が正しいかを確認する。

      2. ヘッダーに記述されたアルゴリズムと秘密鍵(または公開鍵)を用いて、署名部分を再計算する。

      3. 再計算した署名と、トークンに添付されていた署名が一致するかを確認する。一致しない場合は改ざんとみなし、アクセスを即座に拒否する。

      4. ペイロード内の有効期限(exp)クレームを確認し、期限切れでないかを確認する。期限切れであれば、アクセスを拒否する。

  • ステップ 4: 認証・認可の実行とレスポンス

    • 署名検証と有効期限の確認が完了し、トークンが有効であると判断された場合、サーバーはペイロードをデコードして利用者IDや権限情報を取得する。

    • この情報に基づいて、要求されたリソースへの認可(アクセス権限があるか)を行い、問題なければ処理を実行して結果をクライアントに返す。


まとめ

JWT(JSON Web Token)は、Webの世界における認証・認可のあり方を根本から変革した技術である。その自己完結性によって、サーバー側の状態管理の煩雑さが解消され、APIの応答速度が飛躍的に向上する。特に、マイクロサービスアーキテクチャやモバイル連携が必然となる現代の開発環境において、HS256やRS256といった多様なアルゴリズム選択肢とともに、セキュリティと柔軟性の両面で非常に優位性がある。この技術を習得し、適切にシステムへ導入することは、ITリテラシーの高い技術者がサービスの拡張性と堅牢性を高めるための確かな一歩となるだろう。

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