ブラウザアイソレーションとは、ユーザーのデバイスとWebサイトを分離するセキュリティ技術である。Webサイトのコンテンツを、クラウド上の仮想環境で実行することで、ユーザーのデバイスに悪意のあるコードが侵入するリスクを低減する。
ブラウザアイソレーションの仕組み
ブラウザアイソレーションの仕組みは、大きく分けて以下の3つに分けられる。
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ブラウザの動作を隔離する
ブラウザアイソレーションでは、ユーザーのデバイスとブラウザの実行環境を隔離する。これにより、ブラウザで実行されるコードやデータが、ユーザーのデバイスに直接アクセスすることができなくなる。
隔離を行う方法としては、以下のようなものがある。
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ブラウザの動作を制限する
ブラウザアイソレーションでは、ブラウザの動作を制限することで、マルウェアの侵入や拡散を防止する。
制限を行う方法としては、以下のようなものがある。
- ファイルアクセスの制限:ブラウザがファイルにアクセスすることを制限する。
- ネットワークアクセスの制限:ブラウザがネットワークにアクセスすることを制限する。
- 実行コードの制限:ブラウザが実行できるコードを制限する。
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ブラウザの状態を監視する
ブラウザアイソレーションでは、ブラウザの状態を監視することで、マルウェアの感染や悪意のある動作を検知する。
監視を行う方法としては、以下のようなものがある。
- メモリアクセスの監視:ブラウザがメモリにアクセスすることを監視する。
- プロセスの監視:ブラウザが実行するプロセスを監視する。
- ネットワークトラフィックの監視:ブラウザがネットワークに送受信するトラフィックを監視する。
ブラウザアイソレーションの仕組みにより、ユーザーのデバイスがマルウェアの侵入や拡散から保護される。また、ブラウザの再起動によって、隔離された環境も再起動されるため、マルウェアの残存を防ぐこともできる。
ブラウザアイソレーションの種類
ブラウザアイソレーションには、大きく分けて以下の2種類がある。
ローカルアイソレーション
ローカルアイソレーションは、ブラウザの実行環境を、ユーザーのデバイスの内部で隔離する技術である。
ローカルアイソレーションのメリットは、以下の2つである。
- 低コストで導入できる
- ネットワークの帯域幅を消費しない
ローカルアイソレーションのデメリットは、以下の2つである。
- ブラウザの動作が遅くなる可能性がある
- ブラウザの機能が制限される可能性がある
ローカルアイソレーションは、以下の場面で活用されることが多い。
リモートアイソレーション
リモートアイソレーションは、ブラウザの実行環境を、ユーザーのデバイスとは別の環境で隔離する技術である。
リモートアイソレーションのメリットは、以下の2つである。
- ブラウザの動作が速い
- ブラウザの機能が制限されにくい
リモートアイソレーションのデメリットは、以下の2つである。
- 導入コストが高い
- ネットワークの帯域幅を消費する
リモートアイソレーションは、以下の場面で活用されることが多い。
- 企業におけるセキュリティ対策
- 公共のWi-Fi環境での利用
ローカルアイソレーションとリモートアイソレーションの違いを表にすると以下の通り。
項目 | ローカルアイソレーション | リモートアイソレーション |
---|---|---|
導入コスト | 低い | 高い |
ネットワーク帯域幅の消費 | 少ない | 多い |
ブラウザの動作 | 遅い可能性がある | 速い |
ブラウザの機能 | 制限される可能性がある | 制限されにくい |
活用場面 | 個人、アプリケーションの開発やテスト | 企業、公共のWi-Fi環境での利用 |
ブラウザアイソレーションのメリット
標的型攻撃によるマルウェア感染を防ぐことができる
標的型攻撃は、特定の組織や個人を狙って行う攻撃である。標的型攻撃では、通常のセキュリティ対策では検知できないような高度なマルウェアが使用されることが多い。ブラウザアイソレーションは、このような高度なマルウェアによる感染も防ぐことができる。
ゼロデイ攻撃によるマルウェア感染を防ぐことができる
ゼロデイ攻撃は、脆弱性が発見される前に攻撃が行われる攻撃である。ゼロデイ攻撃では、セキュリティ対策ソフトが脆弱性を修正する前にマルウェアが感染する可能性がある。ブラウザアイソレーションは、ゼロデイ攻撃によるマルウェア感染も防ぐことができる。
従業員のセキュリティ意識を向上させることができる
従業員が、誤ってマルウェアに感染したWebサイトにアクセスした場合、ブラウザアイソレーションによって、マルウェアがユーザーのデバイスに侵入するのを防ぐことができる。これにより、従業員のセキュリティ意識を向上させることができる。
ブラウザアイソレーションのデメリット
ブラウザの動作が遅くなる可能性がある
ブラウザアイソレーションでは、ユーザーのデバイスとブラウザの実行環境を隔離するため、ブラウザの動作が遅くなる可能性がある。これは、隔離された環境でブラウザを実行するために、CPUやメモリなどのリソースを消費するためである。
ブラウザの機能が制限される可能性がある
ブラウザアイソレーションでは、ブラウザの機能を制限することで、マルウェアの侵入や拡散を防止する。そのため、一部のブラウザ機能が利用できなくなる可能性がある。
コストがかかる可能性がある
ブラウザアイソレーションを導入するためには、サンドボックスや仮想マシンなどの環境を構築する必要がある。そのため、コストがかかる可能性がある。
ブラウザアイソレーションの活用例
1. 企業におけるセキュリティ対策
企業では、従業員が業務でWebブラウザを使用することが多いため、マルウェア感染のリスクが高い。ブラウザアイソレーションを活用することで、従業員のデバイスをマルウェアから保護し、業務の継続性を高めることができる。
具体的には、以下の対策に活用できる。
- 社内ネットワークへの接続を制限する
- 特定のWebサイトへのアクセスを制限する
- 拡張機能やプラグインの使用を制限する
2. 個人のセキュリティ対策
個人でも、ブラウザアイソレーションを活用することで、マルウェア感染のリスクを低減することができる。
具体的には、以下の対策に活用できる。
- 公共のWi-Fiに接続する際に使用する
- フィッシングサイトやマルウェアの感染リスクが高いWebサイトにアクセスする際に使用する
3. アプリケーションの開発やテスト
アプリケーションの開発やテストにおいても、ブラウザアイソレーションを活用することで、セキュリティリスクを低減することができる。
具体的には、以下の対策に活用できる。
- 未公開のアプリケーションのテストを行う際に使用する
- 脆弱性のあるWebサイトをテストする際に使用する
まとめ
ブラウザアイソレーションは、Webサイトのコンテンツをユーザーのデバイスから分離することで、マルウェアの感染を防ぐことができるセキュリティ技術である。企業のセキュリティ対策や、クラウドサービス、IoT機器など、さまざまな場面で活用されている。