NewSQLは、従来のリレーショナルデータベース(RDBMS)のACID特性を維持しながら、分散型システムのスケーラビリティとパフォーマンスを兼ね備えた新しいデータベースシステムである。
NewSQLが登場した背景
NewSQLが登場した背景には、以下の2つの要因がある。
1. データ量や処理量の増加
近年、インターネットやIoTの普及により、データ量や処理量が急激に増加している。従来のRDBMSは、データ量や処理量の増加に対応するために、スケールアップを行う必要があるが、その際に、データの整合性やパフォーマンスの低下などの課題が生じることがある。
2. データの多様化
近年、データの種類が多様化している。従来のRDBMSは、構造化データに適したデータベースであるが、非構造化データや半構造化データの扱いが難しい。NoSQLは、非構造化データや半構造化データに適したデータベースであるが、ACIDトランザクションなどのデータの整合性を保つ機能が弱い。
これらの背景から、従来のRDBMSとNoSQLの両方のメリットを兼ね備えたデータベースシステムのニーズが高まり、NewSQLが登場した。
NewSQLの特徴
スケーラビリティとパフォーマンス
NewSQLは、分散型システムを採用することで、従来のRDBMSでは困難であったスケーラビリティとパフォーマンスを実現している。
分散型システムとは、複数のコンピューターを用いて、データを分割して保存し、処理するシステムである。
分散型システムを採用することで、データ量の増加に伴うシステムの拡張や、複数のユーザーからの同時アクセスによるパフォーマンスの低下を抑えることができる。
ACID特性の維持
NewSQLは、RDBMSと同じように、ACID特性を維持している。ACID特性とは、原子性(Atomicity)、一貫性(Consistency)、分離性(Isolation)、永続性(Durability)の4つの特性の総称である。
原子性とは、トランザクションがすべて完了するか、すべて失敗するかのどちらかであることを保証する特性である。
一貫性とは、データベースの状態が常に整合性を保つことを保証する特性である。
分離性とは、複数のトランザクションが同時に実行されている場合でも、それぞれのトランザクションが互いに干渉しないようにする特性である。
永続性とは、トランザクションが完了すると、その変更は永続的にデータベースに記録されることを保証する特性である。
SQL言語のサポート
NewSQLは、RDBMSと同じように、SQL言語をサポートしている。SQL言語とは、データベースを操作するための標準的な言語である。
SQL言語のサポートにより、RDBMSで開発されたアプリケーションをNewSQLでもそのまま利用することができる。
NewSQLのメリット
大規模なデータベースの構築が可能
NewSQLは、分散処理技術を用いることで、水平方向にスケールアップすることが可能である。そのため、データ量や処理量の増加に柔軟に対応することができる。例えば、オンラインショッピングサイトでは、顧客の注文履歴や商品情報などのデータを大量に扱う必要がある。NewSQLを用いることで、データ量の増加に伴って、データベースの容量や処理能力を拡張することができる。
ビジネスアプリケーションの信頼性向上
NewSQLは、ACIDトランザクションをサポートすることで、データの整合性を保つことができる。そのため、ビジネスアプリケーションで求められる高い信頼性を実現することができる。例えば、金融機関では、顧客の口座情報や取引履歴などのデータを扱う必要がある。NewSQLを用いることで、データの整合性を保ち、誤ったデータの更新や削除を防止することができる。
データ統合の容易化
NewSQLは、従来のRDBMSで扱える構造化データだけでなく、NoSQLで扱える非構造化データもサポートしている。そのため、さまざまな種類のデータを統合的に管理することができる。例えば、IoTシステムでは、センサーから取得したデータや、デバイスの動作ログなどのデータを統合的に管理する必要がある。NewSQLを用いることで、さまざまな種類のデータを効率的に管理することができる。
NewSQLの用途
- オンラインショッピングやソーシャルメディアなどの、大量のデータ処理が必要なシステム
NewSQLは、高いスケーラビリティを備えているため、これらのシステムに適している。例えば、オンラインショッピングサイトでは、顧客の注文履歴や商品情報などのデータを大量に扱う必要がある。NewSQLを用いることで、データ量の増加に伴って、データベースの容量や処理能力を拡張することができる。
- 金融や医療などの、高い信頼性が求められるシステム
NewSQLは、強い整合性を備えているため、これらのシステムに適している。例えば、金融機関では、顧客の口座情報や取引履歴などのデータを扱う必要がある。NewSQLを用いることで、データの整合性を保ち、誤ったデータの更新や削除を防止することができる。
- IoTやビッグデータなどの、さまざまなデータが活用されるシステム
NewSQLは、幅広いデータモデルをサポートしているため、これらのシステムに適している。例えば、IoTシステムでは、センサーから取得したデータや、デバイスの動作ログなどのデータを統合的に管理する必要がある。NewSQLを用いることで、さまざまな種類のデータを効率的に管理することができる。
主要なNewSQL製品
1. Cloud Spanner
Cloud Spannerは、Google Cloud Platformの提供するNewSQL製品である。Cloud Spannerは、分散処理技術を用いることで、高いスケーラビリティと強い整合性を実現している。また、グローバルなデータセンターを活用することで、世界中のユーザーにデータベースサービスを提供できる。
2. CockroachDB
CockroachDBは、オープンソースのNewSQL製品である。CockroachDBは、分散処理技術を用いることで、高いスケーラビリティと強い整合性を実現している。また、自動修復機能を備えており、ノードがダウンしてもデータの一貫性を保つことができる。
3. NuoDB
NuoDBは、VMwareの提供するNewSQL製品である。NuoDBは、分散処理技術を用いることで、高いスケーラビリティと強い整合性を実現している。また、リアルタイム分析機能を備えており、大量のデータをリアルタイムに分析することができる。
4. VoltDB
VoltDBは、オープンソースのNewSQL製品である。VoltDBは、分散処理技術を用いることで、高いスケーラビリティと強い整合性を実現している。また、リアルタイムトランザクション機能を備えており、大量のトランザクションをリアルタイムに処理することができる。
これらの製品は、それぞれに特徴や強みがあるため、用途や要件に合わせて選択することが重要である。
NewSQLの課題
しかし、NewSQLは、まだ発展途上であり、以下の課題もある。
1. 技術の複雑さ
NewSQLは、従来のRDBMSとNoSQLの技術を組み合わせた複雑なシステムである。そのため、導入や運用には、一定の技術力が必要となる。
2. コストの高さ
NewSQLのシステム構築や運用には、一定のコストがかかる。そのため、導入コストや運用コストを抑えることが難しい。
3. パフォーマンスの低下
NewSQLは、分散処理技術を用いているため、処理の一部が遅延することがある。そのため、パフォーマンスの低下が課題となることがある。
4. データの可視化や分析の難しさ
NewSQLは、さまざまな種類のデータを統合的に管理できるが、データの可視化や分析が難しいという課題もある。
まとめ
NewSQLは、従来のRDBMSとNoSQLのそれぞれのメリットを兼ね備えた、新しいデータベースシステムである。
分散型システムのスケーラビリティとパフォーマンス、SQL言語のサポートといった特徴を有しており、OLTP、ビッグデータの分析、IoTやクラウドコンピューティングなどの分散システムなど、さまざまな用途に適している。
今後、データ量の増加や、ビッグデータの分析の需要の拡大に伴い、NewSQLの需要はさらに高まっていくと考えられる。