ICMPとは?種類などをわかりやすく解説

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インターネット制御メッセージプロトコル(ICMP)は、インターネット通信において、エラー通知や情報伝達を行うためのプロトコルである。IP(インターネットプロトコルデータグラムの処理におけるエラー通知や、通信状況に関する情報の伝達などに使用される。




ICMPの役割

ICMPは、インターネット通信において、以下の3つの重要な役割を担っている。

1. エラー通知

ICMPは、IPデータグラムの処理におけるエラーを検出した場合、送信側にエラーの種類を通知する。これにより、ネットワーク障害の原因を特定し、迅速な復旧が可能となる。

具体的には、以下の様なエラーについて通知を行う。

  • 宛先ホスト到達不能: 送信先のホストが存在しない、またはネットワーク的に到達できない場合
  • 時間超過: データグラムの転送中にタイムアウトが発生した場合
  • パラメータ問題: IPデータグラムに形式エラーなど問題がある場合
  • ポート到達不能: 送信先のポートが閉じている、または存在しない場合
  • パケット再構築不可: 破損したデータグラムを受信した場合
  • 経路MTU超:送信先のMTU(Maximum Transmission Unit)を超えるサイズのデータグラムを送信しようとした場合

これらのエラー通知は、ネットワーク管理者やアプリケーション開発者にとって、問題解決に不可欠な情報となる。

2. 情報伝達

ICMPは、ホストやルーターなどのネットワーク機器間で、通信状況に関する情報を伝達する。これにより、ネットワークの効率的な運用が可能となる。

具体的には、以下の様な情報を伝達する。

  • ルーター再構成: ルーティングテーブルが変更された場合
  • ホスト再起動: ホストが再起動された場合
  • タイムスタンプ: データグラムの送信時刻と受信時刻
  • マスク要求: サブネットマスク情報が必要な場合
  • マスク応答: サブネットマスク情報

これらの情報は、ネットワーク機器が最適な経路を選択したり、ネットワークの輻輳を回避したりするために役立てられる。

3. 診断ツール

ICMPは、ネットワークの診断ツールとして使用される。代表的な例としては、pingコマンドとtracerouteコマンドがある。

  • pingコマンド: 特定のホストへの到達可能性を診断するコマンド。ICMP_ECHO_REQUESTメッセージとICMP_ECHO_REPLYメッセージを使用して、ホストまでの往復時間を測定する。
  • tracerouteコマンド: パケットが宛先ホストに到達するまでの経路を辿るコマンド。各ホップまでの到達時間を測定することで、ネットワークの遅延や障害箇所を特定することができる。

これらのツールは、ネットワーク管理者がネットワークの健全性を維持するために役立てられる。

このように、ICMPは、ネットワークのエラー通知、情報伝達、診断という3つの重要な役割を担っており、インターネット通信において不可欠なプロトコルと言える。

ICMPの種類

ICMPメッセージは、種類によって様々な役割を担っている。代表的な種類とその役割を以下に示す。

1. エラー通知メッセージ

  • ICMP_DESTINATION_UNREACHABLE: 宛先ホストに到達できない場合に送信されるメッセージ。ネットワーク障害や宛先ホストの停止など、様々な原因が考えられる。
  • ICMP_TIME_EXCEEDED: データグラムの転送中にタイムアウトが発生した場合に送信されるメッセージ。ネットワーク輻輳やルーターの処理遅延などが原因となる可能性が高い。
  • ICMP_PARAMETER_PROBLEM: IPデータグラムに問題がある場合に送信されるメッセージ。データグラムの形式エラーや、ヘッダー情報の間違いなどが考えられる。
  • ICMP_SOURCE_QUENCH: 送信元ホストがネットワーク輻輳によって過負荷状態になった場合に、送信元ホストに対して送信速度の抑制を要求するメッセージ。
  • ICMP_REDIRECT: 送信元ホストがより効率的な経路を選択できるよう、代替の経路を通知するメッセージ。ネットワークの状況変化によって、最適な経路が変更された場合などに送信される。

これらのエラー通知メッセージは、ネットワーク障害の原因を特定し、迅速な復旧に役立てられる。

2. 情報伝達メッセージ

  • ICMP_ECHO_REQUEST: pingコマンドで使用されるメッセージ。送信元ホストから宛先ホストへの到達可能性を診断するために使用される。
  • ICMP_ECHO_REPLY: ICMP_ECHO_REQUESTメッセージに対する応答メッセージ。宛先ホストから送信元ホストへの到達可能性を通知するために使用される。
  • ICMP_ROUTER_ADVERTISEMENT: ルーターがネットワーク内に存在することを通知するメッセージ。ネットワーク機器がルーターの存在を認識し、最適な経路を選択するために使用される。
  • ICMP_ROUTER_SOLICITATION: ホストがルーターの存在を問い合わせるメッセージ。ネットワーク機器が新しいルーターを発見するために使用される。
  • ICMP_TIMESTAMP: データグラムの送信時刻と受信時刻を通知するメッセージ。ネットワークの遅延時間やパケットロスなどを測定するために使用される。
  • ICMP_TIMESTAMP_REPLY: ICMP_TIMESTAMPメッセージに対する応答メッセージ。データグラムの受信時刻を通知するために使用される。
  • ICMP_ADDRESS_MASK_REQUEST: サブネットマスク情報が必要な場合に送信されるメッセージ。
  • ICMP_ADDRESS_MASK_REPLY: サブネットマスク情報を含むメッセージ。

これらの情報伝達メッセージは、ネットワーク機器間で情報を共有し、ネットワークの効率的な運用を可能にする。

3. その他のメッセージ

  • ICMP_SECURITY: セキュリティ関連の情報を伝達するために使用されるメッセージ。
  • ICMP_MCAST_TOOL_CONTROL: マルチキャストグループの管理に使用されるメッセージ。
  • ICMP_MCAST_MESSAGE: マルチキャストグループに参加しているメンバー間で情報を共有するために使用されるメッセージ。

これらのメッセージは、特定のネットワーク機能やアプリケーションで使用される。

ICMPの利用例

ICMPは、その多様な機能を活用して、様々なネットワークツールやアプリケーションで利用されている。ここでは、代表的な利用例をいくつか紹介する。

1. ネットワーク診断ツール

ICMPは、ネットワークの健全性を維持するために欠かせないネットワーク診断ツールにおいて、重要な役割を担っている。具体的には、以下のツールで使用されている。

  • ping: 特定のホストへの到達可能性を診断するコマンド。ICMP_ECHO_REQUESTメッセージとICMP_ECHO_REPLYメッセージを用いて、ホストまでの往復時間を測定し、ネットワークの遅延や障害箇所を特定する。
  • traceroute: パケットが宛先ホストに到達するまでの経路を辿るコマンド。各ホップまでの到達時間を測定することで、ネットワークの遅延や障害箇所を特定する。
  • pathping: tracerouteと似ているが、同時にパケットロスも測定するコマンド。ネットワークの輻輳やパケット消失の原因を特定する。
  • MTR (Multicast Traceroute): 複数の経路を同時に辿り、それぞれの経路の遅延やパケットロスを測定するコマンド。より詳細なネットワーク状況を把握することができる。

これらのツールは、ネットワーク管理者がネットワーク障害の原因を特定し、迅速に復旧するために役立てられる。

2. ファイアウォール

ICMPは、ファイアウォールと呼ばれるネットワークセキュリティツールにおいても重要な役割を果たしている。ファイアウォールは、不正なアクセスを防ぐために、ネットワークトラフィックを監視し、許可する通信とそうでない通信を区別する。ICMPは、以下の様な用途でファイアウォールに利用されている。

  • アクセス許可/拒否の判断: ICMPメッセージの種類や内容を分析することで、不正なアクセスかどうかを判断し、通信を許可/拒否する。
  • 侵入検知: 特定のICMPメッセージの送信を検知することで、DoS攻撃やスキャン攻撃などの侵入を検知する。
  • ネットワーク診断: ICMPメッセージを使用して、ネットワークの健全性を診断する。

ICMPは、ファイアウォールがネットワークを不正アクセスから守るために役立てられる。

3. その他の利用例

ICMPは、上記以外にも様々な用途で利用されている。例えば、以下の様なものがある。

  • VPN: 仮想プライベートネットワーク(VPN)において、接続状況を診断するために使用される。
  • ルーティング: ルーターが最適な経路を選択するために使用される。
  • ネットワーク管理: ネットワーク管理者がネットワークの状況を監視するために使用される。
  • ゲーム: オンラインゲームにおいて、プレイヤー間の通信状況を診断するために使用される。

このように、ICMPは、その汎用性と柔軟性の高さから、様々なネットワークツールやアプリケーションで幅広く利用されている。

ICMPとpingの違い

ICMPとpingは、どちらもネットワーク診断に関わる用語だが、混同されやすい異なる概念である。

ICMPは、インターネット通信において、エラー通知や情報伝達を行うためのプロトコルである。IPデータグラムの処理におけるエラー通知や、通信状況に関する情報の伝達などに使用される。

一方、pingは、ICMPを利用したネットワーク診断ツールである。特定のホストへの到達可能性を診断するために使用される。具体的には、以下の操作を行う。

  1. 送信元ホストから宛先ホストへICMP_ECHO_REQUESTメッセージを送信する。
  2. 宛先ホストがICMP_ECHO_REQUESTメッセージを受信すると、ICMP_ECHO_REPLYメッセージを返信する。
  3. 送信元ホストがICMP_ECHO_REPLYメッセージを受信すると、往復時間を測定する。

pingコマンドは、以下の様な情報を表示する。

  • 宛先ホストのIPアドレス
  • パケットのサイズ
  • 往復時間
  • パケットロス率

これらの情報は、ネットワークの遅延や障害箇所を特定するために役立てられる。

つまり、ICMPはネットワーク機器間で情報をやり取りするためのルールであり、pingはICMPを利用した具体的なツールであると言える。

まとめ

ICMPメッセージは、エラー通知、情報伝達、診断など、様々な役割を担っており、ネットワーク通信において不可欠な役割を果たしている。また、ネットワーク診断ツールやファイアウォールなど、様々なネットワークツールやアプリケーションで使用されている。

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