APT攻撃とは、Advanced Persistent Threatの略で、高度持続的脅威とも呼ばれるサイバー攻撃の一種である。
APT攻撃の特徴
APT攻撃は、主に国家やテロ組織などの高度な技術力を有する組織によって行われ、機密情報の窃取やシステムの破壊など、さまざまな目的で用いられる。特定の組織や個人を狙って、長期間にわたって継続的に攻撃を行うのが特徴である。
APT攻撃は、大きく分けて以下の3つのフェーズに分けられる。
1. 情報収集フェーズ
APT攻撃の第一歩は、ターゲットの情報を収集することである。攻撃者は、ターゲットの組織のWebサイトやSNSなどの公開情報を収集するだけでなく、ソーシャルエンジニアリングやハッキングなどの手法を用いて、ターゲットの組織の内部情報を収集する。
2. 侵入フェーズ
情報収集フェーズで収集した情報をもとに、攻撃者はターゲットのシステムに侵入する。侵入手法としては、マルウェア感染、ゼロデイ攻撃、ソーシャルエンジニアリングなどが挙げられる。
3. 情報窃取フェーズ
侵入フェーズで成功すると、攻撃者はターゲットのネットワークやシステムから情報を窃取する。情報窃取の手法としては、マルウェアによる情報の自動収集、不正アクセスによる情報の直接窃取などが挙げられる。
APT攻撃の手口
具体的には、以下のようなさまざまな攻撃手法が用いられる。
マルウェア感染
マルウェアは、コンピューターやネットワークに侵入して、データを盗んだり、システムを破壊したりする悪意のあるソフトウェアである。APT攻撃では、標的となる組織や個人の特定の利用環境や業務に合わせて、高度にカスタマイズされたマルウェアが用いられることが多い。
ソーシャルエンジニアリング
ソーシャルエンジニアリングは、人間の心理を巧みに利用して、標的となる人物の注意を逸らしたり、意図的に誤った行動をさせたりすることで、セキュリティの脆弱性を突く攻撃手法である。APT攻撃では、標的となる人物の役職や業務内容などを事前に調査した上で、巧みなメールやフィッシングサイトなどを用いて、標的をだましてマルウェアに感染させたりする。
ゼロデイ攻撃
ゼロデイ攻撃は、まだ修正パッチが提供されていない脆弱性を突いた攻撃である。APT攻撃では、攻撃者が標的となる組織や個人のネットワークに侵入する前に、脆弱性を突いたマルウェアを開発しておくことで、検知を回避する。
内部者による攻撃
内部者による攻撃は、組織や個人の内部にいる人間が、故意または過失によって攻撃に加担する攻撃である。APT攻撃では、攻撃者は標的となる組織や個人の従業員をだまして、マルウェアをインストールさせたり、機密情報を漏洩させたりする場合がある。
APT攻撃の特徴は、以下の3つが挙げられる。
標的を絞った攻撃
APT攻撃は、特定の組織や個人を狙って行われる。そのため、攻撃者は標的の内部情報を入手するために、長期間かけて調査や準備を行う。
長期間にわたる攻撃
APT攻撃は、一度侵入に成功すれば、長期間にわたって攻撃を続ける。そのため、攻撃者は検知されないように、巧妙な手口を用いる。
高度な技術を用いた攻撃
APT攻撃は、最新の技術やツールを用いて行われる。そのため、従来のセキュリティ対策では防ぐことが難しい。
APT攻撃の事例
APT攻撃は、その高度な手口から、世界中で多くの被害が発生している。ここでは、代表的なAPT攻撃の事例をいくつか紹介する。
オーロラ攻撃
オーロラ攻撃とは、2009年から2010年にかけて、中国政府がアメリカやヨーロッパの政府機関や企業を標的としたAPT攻撃である。この攻撃では、ゼロデイ攻撃や標的型メールなどを駆使し、多くの機密情報が盗まれたとされる。
Stuxnet
Stuxnetとは、イランの核開発施設を標的としたAPT攻撃で、2010年に発覚した。この攻撃では、マルウェアを感染させたコンピューター制御の遠心分離機を遠隔操作し、破壊に成功した。
サウジアムバーン攻撃
サウジアムバーン攻撃とは、2012年にサウジアラムコの石油施設を標的としたAPT攻撃である。この攻撃では、標的型メールを送信し、マルウェアを感染させたコンピューターから、サウジアラムコのネットワークに侵入した。その後、サウジアラムコのネットワークを乗っ取り、石油施設の操業を妨害した。
SolarWinds社攻撃
SolarWinds社攻撃とは、2020年にSolarWinds社のソフトウェアにマルウェアを仕込み、世界中の政府機関や企業を標的としたAPT攻撃である。この攻撃では、マルウェアを感染させたソフトウェアを世界中の企業にインストールさせ、企業のネットワークに侵入した。その後、企業のネットワークから機密情報を盗んだり、企業のシステムを攻撃したりした。
これらのAPT攻撃は、いずれも高度な手口で行われ、大きな被害をもたらした。APT攻撃は、今後もますます高度化し、複雑化していくことが予想される。そのため、APT攻撃の被害を防ぐためには、セキュリティ対策の強化と、標的型攻撃に対する意識向上が重要である。
APT攻撃の対策
APT攻撃の対策としてあ、以下の方法が挙げられる。
セキュリティ対策の強化
マルウェア対策やファイアウォールなどのセキュリティ対策を強化することで、APT攻撃の侵入を防ぐことができる。また、標的となる組織や個人の業務内容や重要性に合わせて、セキュリティ対策を適切に組み合わせることも重要である。
具体的には、以下の対策を講じる必要がある。
* マルウェア対策ソフトの導入と最新版への更新
* ファイアウォールの設定を適切に行う
* 不正アクセス検知システムの導入
* 脆弱性診断の実施
ユーザー教育の徹底
ソーシャルエンジニアリング攻撃への対策として、ユーザー教育を徹底することが重要である。ユーザーは、不審なメールやフィッシングサイトに注意するとともに、パスワードの管理やセキュリティソフトの更新など、基本的なセキュリティ対策を徹底する必要がある。
具体的には、以下の教育を実施する必要がある。
* 不審なメールやフィッシングサイトの見分け方
* パスワードの管理方法
* セキュリティソフトの利用方法
情報共有の強化
APT攻撃の情報は、政府や企業、研究機関などが連携して共有することで、攻撃の早期発見や被害の拡大防止につながる。組織や個人は、APT攻撃の情報共有に積極的に取り組むべきである。
具体的には、以下の情報共有を行う必要がある。
* APT攻撃の脅威情報
* APT攻撃の攻撃手法
* APT攻撃の被害事例
APT攻撃は、高度化・巧妙化の一途をたどっている。組織や個人は、APT攻撃への対策を常に意識し、万全の対策を講じる必要がある。
まとめ
APT攻撃への対策は、情報収集と分析、セキュリティ対策の強化、人材育成の3つのステップで行うことが重要である。
APT攻撃は、その高度な手口から、被害を防ぐことは容易ではない。しかし、上記のような対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが可能である。