WANとは?仕組みや種類などをわかりやすく解説

WAN(Wide Area Network)は、広域通信網のことである。




WANの仕組み

WANは、広大な地理的範囲をカバーするため、多様な技術を駆使して構築されている。その中核をなすのは、データ通信を可能にする伝送技術と、通信経路を制御するルーティング技術である。

伝送技術

WANにおけるデータ伝送には、主に以下の技術が用いられる。

  • 専用線: 特定の2地点間を物理的に結ぶ回線であり、安定した通信品質が求められる場面で利用される。
  • パケット交換: データを小さなパケットに分割し、複数の経路を通じて送信する技術。インターネットで広く利用されている。
  • MPLS(Multiprotocol Label Switching): パケットにラベルを付与し、効率的なルーティングを実現する技術。高品質な通信サービスを提供する際に利用される。

ルーティング技術

ルーティング技術は、データが送信元から宛先まで到達するための最適な経路を選択する役割を担う。WANでは、主に以下のルーティングプロトコルが利用される。

  • BGP(Border Gateway Protocol): インターネットにおける大規模なルーティングを実現するプロトコル
  • OSPF(Open Shortest Path First): 企業ネットワークなどで利用される、効率的なルーティングを実現するプロトコル
  • RIP(Routing Information Protocol): 比較的小規模なネットワークで利用される、シンプルなルーティングプロトコル

WANの種類

WANは、その用途や技術によって様々な種類に分類される。ここでは、代表的なWANの種類とその特徴を紹介する。

専用線

専用線は、特定の2地点間を物理的に結ぶ回線であり、通信事業者から提供される。回線帯域を占有できるため、安定した通信品質とセキュリティが確保できる。音声通話やビデオ会議、基幹業務システムの接続など、信頼性が求められる用途に適している。

広域イーサネット

広域イーサネットは、イーサネット技術をWANに応用したものである。LANで使用されるイーサネットケーブルやスイッチなどの機器をそのまま利用できるため、導入コストが低く、拡張性にも優れている。企業ネットワークやデータセンター間の接続などに利用される。

IP-VPN(Internet Protocol Virtual Private Network)

IP-VPNは、インターネットなどの公衆回線を利用して、あたかも専用線のように安全な通信を実現する技術である。暗号化やトンネリングなどの技術を用いて、データの機密性と完全性を確保する。企業ネットワークの構築や、拠点間のセキュアな通信に利用される。

インターネットVPN

インターネットVPNは、IP-VPNと同様にインターネットなどの公衆回線を利用するが、より安価で手軽に利用できる。個人利用や小規模なビジネスでの利用に適している。

SD-WAN(Software-Defined WAN)

また、近年はSD-WAN(Software-Defined WAN)が注目を集めている。

SD-WANとは、ソフトウェアでWANを制御し、従来のWANが抱えていた課題を解決する技術である。従来のWANはハードウェア中心で柔軟性に欠けていたが、SD-WANはソフトウェアで定義・制御することで柔軟かつ効率的なネットワーク構築を可能にする。

SD-WAN導入のメリットは、コスト削減、柔軟性、運用効率の向上、セキュリティ強化、クラウドサービスとの連携などが挙げられる。SD-WANは拠点間接続、クラウド接続、モバイル接続など、様々な場面で利用されており、従来のWANの課題を解決し、より柔軟で効率的なネットワーク構築を可能にする技術として注目されている。

WANとLANの違い

WANとLANは、どちらもコンピュータネットワークであるが、その規模や用途、技術に大きな違いがある。

規模の違い

LANは、限定された地理的範囲、例えばオフィスビルや家庭内など、比較的狭いエリアをカバーするネットワークである。一方、WANは、都市、国、あるいは大陸間など、広大な地理的範囲をカバーするネットワークである。

用途の違い

LANは、主にファイル共有、プリンタ共有、社内システムへのアクセスなど、同一組織内での情報共有やコミュニケーションを目的として利用される。一方、WANは、異なる組織間での情報共有やコミュニケーション、インターネットへのアクセスクラウドサービスの利用など、より広範な用途で利用される。

技術の違い

LANでは、イーサネットなどの有線技術やWi-Fiなどの無線技術が一般的に利用される。これらの技術は、高速かつ安定した通信を実現できるが、通信距離が限られている。一方、WANでは、専用線、広域イーサネット、MPLS、インターネットVPNなど、様々な技術が利用される。これらの技術は、長距離通信を可能にするが、LANに比べて通信速度が遅くなる場合がある。

所有者の違い

LANは、通常、企業や個人が所有し、管理する。一方、WANは、通信事業者が所有し、管理する。そのため、WANを利用するには、通信事業者との契約が必要となる。

まとめ

近年、WAN技術は目覚ましい進化を遂げている。特に注目すべきは、SD-WAN(Software-Defined WAN)の登場である。SD-WANは、ソフトウェアによってWANを制御し、柔軟かつ効率的なネットワーク構築を可能にする。従来のWANに比べて、コスト削減、運用効率の向上、セキュリティ強化などのメリットがある。

また、5G(第5世代移動通信システム)の普及も、WANの進化を加速させている。5Gは、高速・大容量・低遅延の通信を実現し、モバイル環境におけるWANの利用を促進している。

WANは、広域にわたるネットワークであり、私たちの生活やビジネスに欠かせないインフラとなっている。

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