ソブリンクラウドとは、自国の法律や規則に則ったデータ主権を担保したクラウドサービスである。
ソブリンクラウドの概要
クラウドサービスは、インターネットを介して、サーバーやストレージ、アプリケーションなどのIT資源を提供するサービスである。その利点として、従来型のオンプレミス型ITと比べて、初期費用や運用コストを削減できる、拡張性が高く、最新の技術を活用しやすいなどが挙げられる。
一方で、クラウドサービスは、データが自国の領域外に保存・処理されるため、データ主権の観点から懸念の声もある。
ソブリンクラウドは、これらの懸念を払拭するために、以下の要件を満たしたクラウドサービスである。
- データ主権の確保:自国の法律や規則に従って、自国の国土内にデータの保管や処理を行うことができる。
- セキュリティの向上:国内で利用できるソブリンクラウドは、国内のセキュリティ基準に準拠しているため、セキュリティの向上が期待できる。
- 利便性の向上:クラウドサービスの利便性を享受しながら、データ主権を重視することができる。
ソブリンクラウドのメリット
データ主権の確保
たとえば、政府や金融機関などの組織は、機密性の高いデータを扱うため、データ主権の確保が求められる。ソブリンクラウドを利用することで、自国の法令や規制に基づいてデータの管理が可能となり、データ主権の確保につながる。
セキュリティの向上
たとえば、製造業などの組織は、生産設備や顧客情報などの重要なデータを扱うため、セキュリティ対策の強化が求められる。ソブリンクラウドを利用することで、自国の法令や規制に基づいてセキュリティ対策を講じることができるため、セキュリティの向上につながる。
災害対策の強化
たとえば、教育機関などの組織は、教材や学生の成績などの重要なデータを扱うため、災害対策の強化が求められる。ソブリンクラウドを利用することで、自国の国土内にデータセンターを設置することができるため、災害発生時のリスクを低減することができる。
経済的メリット
たとえば、中小企業などの組織は、コスト削減が求められる。ソブリンクラウドを利用することで、海外のクラウドサービスに比べて利用料金が安価になる可能性があるため、コスト削減につながる。
ソブリンクラウドのデメリット
選択肢の少なさ
ソブリンクラウドは、まだ普及途上であり、選択肢が少ない。そのため、自社にとって必要な機能を備えたソブリンクラウドを見つけることが難しい場合がある。また、ソブリンクラウドの各ベンダーが提供する機能やサービスが異なるため、自社にとって最適なソブリンクラウドを見つけるためには、比較検討が必要となる。
コストの増加
ソブリンクラウドは、海外のクラウドサービスに比べて、利用料金が割高になる可能性がある。これは、データセンターの設置や運用にかかるコストが、海外に比べて高くなることが要因と考えられる。また、ソブリンクラウドは、自国の法令や規制に基づいて提供されるため、海外のクラウドサービスに比べて、セキュリティ対策や災害対策などのコストが高くなる可能性がある。
技術力やノウハウの不足
ソブリンクラウドの導入や運用には、技術力やノウハウが必要となる。そのため、自社で対応できるのか、外部に委託するのか、検討が必要となる。自社で対応する場合は、技術者を育成したり、外部から技術者を招聘したりする必要がある。また、外部に委託する場合は、委託先の選定やコストの検討が必要となる。
国際的な連携の制約
ソブリンクラウドは、自国の法令や規制に基づいて提供されるため、国際的な連携に制約が生じる可能性がある。たとえば、海外の企業と共同でプロジェクトを実施する場合、データのやり取りやセキュリティ対策などに制約が生じる可能性がある。
イノベーションの遅れ
ソブリンクラウドは、海外のクラウドサービスに比べて、技術革新が遅れる可能性がある。これは、ソブリンクラウドの各ベンダーが、自国の法令や規制に基づいてサービスを提供するため、海外のクラウドサービスに比べて、新技術の導入や実装に慎重になる傾向があることが要因と考えられる。
ソブリンクラウドの代表的なサービス
ソブリンクラウドの代表的なサービスとしては、以下のようなものが挙げられる。
政府機関向けソリューション
政府機関向けソリューションは、政府機関が利用することを前提としたソブリンクラウドサービスである。
日本では、政府が「クラウド・バイ・デフォルト・ポリシー」を策定し、政府機関のクラウド利用を推進している。このポリシーに基づき、政府機関は、原則としてソブリンクラウドの利用を優先することとなっている。
政府機関向けソリューションの代表的なサービスとしては、以下のようなものが挙げられる。
- 日本政府共通クラウド:日本政府が提供する、国内で利用できるソブリンクラウドサービス
- Azure Government:Microsoftが提供する、米国政府向けのソブリンクラウドサービス
- AWS GovCloud (US):Amazon Web Servicesが提供する、米国政府向けのソブリンクラウドサービス
金融機関向けソリューション
金融機関向けソリューションは、金融機関が利用することを前提としたソブリンクラウドサービスである。
金融機関は、個人情報や決済情報など、機密性の高いデータを保有している。そのため、データ主権を重視したソブリンクラウドの利用が求められている。
金融機関向けソリューションの代表的なサービスとしては、以下のようなものが挙げられる。
- NTTコミュニケーションズ ソブリンクラウド for金融:NTTコミュニケーションズが提供する、金融機関向けのソブリンクラウドサービス
- 富士通クラウドソリューション プライベートクラウド for金融:富士通が提供する、金融機関向けのソブリンクラウドサービス
- 日立ソリューションズ プライベートクラウド for金融:日立ソリューションズが提供する、金融機関向けのソブリンクラウドサービス
製造業向けソリューション
製造業向けソリューションは、製造業が利用することを前提としたソブリンクラウドサービスである。
製造業では、生産ラインの制御や品質管理など、リアルタイムでのデータ処理が求められる。そのため、国内で利用できるソブリンクラウドの利用が求められている。
製造業向けソリューションの代表的なサービスとしては、以下のようなものが挙げられる。
- NEC ソブリンクラウド for製造業:NECが提供する、製造業向けのソブリンクラウドサービス
- 富士通 ソブリンクラウド for製造業:富士通が提供する、製造業向けのソブリンクラウドサービス
- 日立ソリューションズ ソブリンクラウド for製造業:日立ソリューションズが提供する、製造業向けのソブリンクラウドサービス
まとめ
ソブリンクラウドは、データ主権を担保したクラウドサービスである。
ソブリンクラウドは、データ主権の確保やセキュリティの向上などのメリットがある一方で、選択肢の少なさやコストの増加などのデメリットもある。ソブリンクラウドの導入を検討する際には、これらのメリットとデメリットを十分に検討することが重要である。
ソブリンクラウドは、データ主権を重視する企業や組織にとって、重要な選択肢となる。各サービスの特徴を理解した上で、自社のニーズに合ったソブリンクラウドを選択することが重要である。