エッジコンピューティングとは、ネットワークの端末に近い場所でデータ処理を行う技術である。
従来のクラウドコンピューティングでは、すべてのデータをデータセンターに集約して処理していたが、エッジコンピューティングでは、データ発生源の近くで処理を行うことで、通信遅延やセキュリティの向上、リアルタイム処理の実現などのメリットがある。
エッジコンピューティングの構成
エッジコンピューティングの構成は、以下の2つの要素に分けられる。
エッジデバイス
エッジデバイスとは、データの発生元に近い場所に設置された、小型のコンピューターである。
エッジデバイスには、以下のような機能が搭載されている。
- データの収集
- データの処理
- データの分析
- データの送信
エッジデバイスは、データの発生元に近い場所に設置されているため、ネットワークの遅延を軽減することができ、リアルタイムな処理を実現することができる。
エッジコンピューティングプラットフォーム
エッジコンピューティングプラットフォームとは、エッジデバイスを管理・運用するためのソフトウェアである。
エッジコンピューティングプラットフォームには、以下のような機能が搭載されている。
- エッジデバイスの管理
- エッジデバイスの運用
- データの収集
- データの処理
- データの分析
- データの送信
エッジコンピューティングプラットフォームは、エッジデバイスを効率的に管理・運用するために必要である。
エッジコンピューティングの流れ
- データの収集
データの発生元で、エッジデバイスがデータを収集する。
データの発生元は、工場の機器や設備、ウェアラブルデバイス、道路や交通機関など、さまざまな場所に存在する。
エッジデバイスは、センサーやカメラなどのデバイスからデータを収集する。
- データの処理
エッジデバイスで、データの処理や分析を行う。
データの処理や分析には、以下のようなものがある。
- リアルタイム処理
- 異常検知
- データ圧縮
- データの暗号化
エッジデバイスは、データの発生元に近い場所で処理を行うため、ネットワークの遅延を軽減することができ、リアルタイムな処理を実現することができる。
- データの送信
必要に応じて、エッジデバイスからクラウドサーバーにデータを送信する。
クラウドサーバーに送信するデータには、以下のようなものがある。
- 分析結果
- 履歴データ
- 予測データ
クラウドサーバーでは、さらに高度な処理や分析を行うことができる。
エッジコンピューティングは、データの発生元に近い場所で、データの処理や分析を行うことで、ネットワークの遅延やセキュリティのリスクなどの課題を解決することができる。
エッジコンピューティングのメリット
1. ネットワークの遅延を軽減できる
データの発生元に近い場所で処理を行うため、ネットワークの遅延を軽減することができる。
例えば、工場の機器や設備から収集したデータを、クラウドサーバーに送信して分析する場合、データの送信に時間がかかるため、リアルタイムな分析が困難になる。
エッジコンピューティングでは、工場の機器や設備にエッジデバイスを設置し、データの発生元で分析を行うため、ネットワークの遅延を軽減し、リアルタイムな分析を実現することができる。
2. セキュリティを強化できる
データの発生元で処理を行うため、データがクラウドサーバーに送信される前に、セキュリティ対策を施すことができる。
例えば、患者のウェアラブルデバイスから収集したデータを、クラウドサーバーに送信して分析する場合、データが送信される途中で盗聴や改ざんされるリスクがある。
エッジコンピューティングでは、患者のウェアラブルデバイスにエッジデバイスを設置し、データの発生元で分析を行うため、データがクラウドサーバーに送信される前に、セキュリティ対策を施すことで、セキュリティを強化することができる。
3. リアルタイム処理を実現できる
データの発生元で処理を行うため、リアルタイム処理を実現できる。
例えば、道路や交通機関から収集したデータを、交通渋滞の解消や事故の防止に活用する場合、リアルタイムな分析が重要である。
エッジコンピューティングでは、道路や交通機関にエッジデバイスを設置し、データの発生元で分析を行うため、リアルタイム処理を実現することができる。
エッジコンピューティングの課題
エッジコンピューティングには、いくつかの課題もある。
- コストの増加
エッジコンピューティングでは、データセンターではなく、データ発生源の近くに処理装置を設置する必要があるため、コストが増加する可能性がある。
- セキュリティの脅威
エッジコンピューティングでは、データ処理装置が分散しているため、セキュリティの脅威が高まる可能性がある。
- 技術の標準化
エッジコンピューティングの技術は、まだ発展途上にあるため、標準化が進んでいない。そのため、異なるベンダーの製品を組み合わせて利用する際に、互換性の問題が発生する可能性がある。
エッジコンピューティングの活用例
- 製造業
工場の機器や設備から収集したデータを、リアルタイムで分析し、生産ラインの効率化や品質管理に活用している。
例えば、工場の製造ラインに設置されたカメラから、製品の不良を検出するシステムにエッジコンピューティングを活用している。カメラから収集した画像データをエッジデバイスで分析することで、リアルタイムに不良品を発見し、生産ラインの停止を未然に防ぐことができる。
- 医療
患者のウェアラブルデバイスから収集したデータを、リアルタイムで分析し、医師による診断や治療に活用している。
例えば、患者の心拍数や血圧などのデータを、ウェアラブルデバイスから収集し、エッジデバイスで分析することで、患者の健康状態をリアルタイムで把握し、医師による迅速な診断や治療につなげることができる。
- 交通
道路や交通機関から収集したデータを、リアルタイムで分析し、交通渋滞の解消や事故の防止に活用している。
例えば、道路に設置されたセンサーから収集した交通量データを、エッジデバイスで分析することで、交通状況をリアルタイムで把握し、交通渋滞の解消や事故の防止につなげることができる。
- その他
そのほか、以下の分野でもエッジコンピューティングが活用されている。
- 小売業:店舗内の顧客行動分析やレジの混雑状況の把握
- 金融業:ATMの稼働状況や不正取引の検知
- エネルギー:スマートグリッドやスマートメーター
エッジコンピューティングの今後の展望
エッジコンピューティングは、今後もさまざまな分野で活用されていくことが期待されている。
その理由としては、以下の3つが挙げられる。
- データ量の増加
IoTの普及により、データ量はますます増加していくと考えられる。エッジコンピューティングは、データの発生元に近い場所で処理を行うため、ネットワークの帯域を圧迫することなく、大規模なデータの処理が可能である。
- リアルタイム処理の重要性
IoTを活用したサービスの多くは、リアルタイム処理が求められる。エッジコンピューティングは、データの発生元で処理を行うため、リアルタイム処理を実現することができる。
- セキュリティの強化
データのセキュリティは、ますます重要になってきている。エッジコンピューティングは、データの発生元で処理を行うため、データがクラウドサーバーに送信される前に、セキュリティ対策を施すことができる。
エッジコンピューティングは、ネットワークの遅延やセキュリティのリスクなどの課題を解決するために、さまざまな分野で活用されていくことが期待されている。
まとめ
エッジコンピューティングは、ネットワークの端末に近い場所でデータ処理を行う技術である。従来のクラウドコンピューティングと比べて、通信遅延の低減、セキュリティの向上、リアルタイム処理の実現などのメリットがある。