C++は、汎用プログラミング言語のひとつである。
派生元であるC言語の機能や特徴を継承しつつ、表現力と効率性の向上のために、手続き型プログラミング・データ抽象・オブジェクト指向プログラミング・ジェネリックプログラミングといった複数のプログラミングパラダイムが組み合わされている。
C++の歴史
C++は、1979年にAT&Tベル研究所のビャーネ・ストロヴストルップによって開発された。当初は「C with Classes」と呼ばれていたが、1983年にC++に改名された。
C++は、1998年にC++98、2003年にC++03、2011年にC++11、2014年にC++14、2017年にC++17、2020年にC++20と、定期的に新しいバージョンがリリースされている。
C++は、ISO/IEC 14882:2020で標準化されている。
C++の特徴
汎用性
C++は、C言語のオブジェクト指向化された言語であるため、C言語の持つ汎用性を継承している。C++では、OSやハードウェアに依存しないプログラムを作成できる。そのため、幅広い用途で利用できる。
処理速度
C++は、コンパイル型言語であるため、実行時にプログラムを翻訳する必要がなく、処理速度が速い。また、C++は、メモリ管理を自分で行う必要があるため、メモリアクセスの効率化を図ることができる。
メモリ管理
C++は、メモリ管理を自分で行う必要がある。そのため、メモリを効率的に利用できるプログラムを作成できる。一方で、メモリリークなどの問題が発生する可能性があるため、注意が必要である。
オブジェクト指向プログラミング
C++は、オブジェクト指向プログラミングをサポートしている。オブジェクト指向プログラミングでは、プログラムをオブジェクトの集合として設計するため、複雑なシステムを構築するのに適している。
C++のデメリット
文法の複雑さ
C++は、C言語の文法に加えて、オブジェクト指向の文法も理解する必要がある。オブジェクト指向の概念や用語が理解できないと、C++を習得することは難しい。また、C++には、ポインタやメモリ管理などの複雑な機能もあるため、それらの理解も必要である。
エラーの原因のわかりにくさ
C++は、メモリ管理やポインタなどの機能が複雑であるため、エラーが発生した場合、原因がわかりにくいことがある。たとえば、メモリリークが発生した場合、その原因を特定するためには、プログラム全体を調査する必要がある。また、ポインタの誤使用によるエラーも、原因の特定が難しいことがある。
保守性の低さ
C++のコードは、複雑になりやすいため、保守性が低いことがある。たとえば、オブジェクト指向の概念を十分に理解せずに作成されたコードは、拡張やメンテナンスが困難になることがある。また、ポインタやメモリ管理などの複雑な機能が使用されているコードも、保守が難しくなることがある。
C++の処理系
C++の処理系は、以下のようなものがある。
- GCC
- Clang
- Microsoft Visual C++
- Intel C++ Compiler
- C++ Builder
C++の用途
大規模な業務システムの開発
C++は、以下のような大規模な業務システムの開発に利用されている。
- 金融システム:銀行、証券会社、保険会社などの金融機関で利用されるシステム
- 公共機関システム:行政機関、自治体などで利用されるシステム
- 基幹システム:企業の基幹業務を支えるシステム
これらのシステムは、大量のデータを扱ったり、高負荷の処理を実行したりする必要があるため、処理速度とメモリ利用効率に優れたC++が適している。
組み込みシステムの開発
C++は、以下のような組み込みシステムの開発に利用されている。
- 家電製品:テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品
- 自動車:エンジン制御、安全装置などの自動車の電子制御システム
- 医療機器:MRI、CTなどの医療機器
これらのシステムは、メモリサイズが小さいデバイスで動作する必要があるため、メモリ利用効率に優れたC++が適している。また、リアルタイムで動作するシステムが多いため、処理速度にも優れている必要がある。
ゲーム開発
C++は、以下のようなゲーム開発に利用されている。
- スマートフォンゲーム:iPhone、Androidなどのスマートフォン向けのゲーム
- コンソールゲーム:PlayStation、Xboxなどのコンソールゲーム機向けのゲーム
- パソコンゲーム:Windows、Macなどのパソコン向けのゲーム
これらのゲームは、リアルタイムで動作する必要があるため、処理速度に優れている必要がある。また、グラフィック処理が複雑なゲームも多いため、メモリ利用効率にも優れている必要がある。
C++は、高い処理速度とメモリ利用効率を実現できるため、さまざまな分野で幅広く利用されている。
C++のサンプルコード
Hello World
C++の最も基本的なサンプルコードは、以下のような「Hello World」プログラムである。
#include <iostream>
int main() {
std::cout << "Hello, World!" << std::endl;
return 0;
}
このプログラムは、標準出力に「Hello, World!」という文字列を表示する。
変数の宣言と代入
変数の宣言と代入を行うサンプルコードは、以下のようなプログラムである。
#include <iostream>
int main() {
int a = 10;
double b = 3.14;
char c = 'A';
std::cout << "a = " << a << std::endl;
std::cout << "b = " << b << std::endl;
std::cout << "c = " << c << std::endl;
return 0;
}
このプログラムは、int型の変数aに10、double型の変数bに3.14、char型の変数cに’A’を代入する。
条件分岐
条件分岐を行うサンプルコードは、以下のようなプログラムである。
#include <iostream>
int main() {
int a = 10;
if (a > 5) {
std::cout << "a は 5 より大きいです。" << std::endl;
} else {
std::cout << "a は 5 以下です。" << std::endl;
}
return 0;
}
このプログラムは、変数aの値が5より大きい場合と小さい場合で、異なる出力を表示する。
繰り返し処理
繰り返し処理を行うサンプルコードは、以下のようなプログラムである。
#include <iostream>
int main() {
for (int i = 0; i < 10; i++) {
std::cout << i << std::endl;
}
return 0;
}
このプログラムは、0から9までの数を順に表示する。
関数
関数を使用するサンプルコードは、以下のようなプログラムである。
#include <iostream>
int add(int a, int b) {
return a + b;
}
int main() {
int x = 10;
int y = 20;
int z = add(x, y);
std::cout << "x + y = " << z << std::endl;
return 0;
}
このプログラムは、2つの引数を受け取り、それらの和を返す関数add()を定義する。main()関数では、add()関数を使用して、10と20の和を計算し、出力する。
その他にもインターネットや書籍でC++のさまざまなサンプルコードが公開されているため、興味のある分野のサンプルコードを探してみるのもよいだろう。
C++のまとめ
C++は、汎用性、パフォーマンス、メモリ管理の自由度に優れたプログラミング言語である。さまざまな用途で使用されており、幅広い分野で活躍できるスキルを身につけることができる。
しかし、その一方で、文法の複雑さ、エラーの原因のわかりにくさ、保守性の低さなどのデメリットもある。C++を利用する際には、これらのデメリットを理解した上で、適切に利用する必要がある。また、C++を習得する際には、文法やオブジェクト指向の概念をしっかりと理解することが重要である。