ロードバランサーとは、複数のサーバーに負荷を分散させる装置のことである。外部からのアクセスを1つのロードバランサーで受け付け、各サーバの負荷状況に応じて、適切なサーバにアクセスを振り分ける。
ロードバランサーの仕組み
ロードバランサーは、外部からのアクセスを1つのロードバランサーで受け付け、各サーバの負荷状況に応じて、適切なサーバにアクセスを振り分ける。ロードバランサーの仕組みは、大きく分けて以下の3つのステップで構成される。
アクセスの受付
ロードバランサーは、外部からのアクセスを1つの仮想IPアドレスで受け付ける。この仮想IPアドレスは、ロードバランサーのハードウェアやソフトウェアに割り当てられている。
負荷分散の決定
ロードバランサーは、各サーバの負荷状況を監視し、適切なサーバにアクセスを振り分ける。負荷分散の決定には、以下の3つの方法が一般的に用いられる。
- ラウンドロビン:各サーバに均等にアクセスを振り分ける。
- ウェイト:各サーバのCPU使用率やメモリ使用率などの負荷状況に応じて、アクセスを振り分ける。
- ヘルスチェック:各サーバの状態を監視し、正常なサーバにのみアクセスを振り分ける。
- アクセスの転送
ロードバランサーは、決定したサーバにアクセスを転送する。転送されたアクセスは、サーバで処理され、ユーザーに応答が返される。
ラウンドロビン
ラウンドロビンは、最もシンプルな負荷分散の方法である。各サーバに均等にアクセスを振り分けることで、負荷を均一に分散することができる。
ラウンドロビンでは、各サーバに割り当てられたIDを順番にアクセスに割り当てる。例えば、2台のサーバを用意した場合、1回目のアクセスはサーバ1に、2回目のアクセスはサーバ2に、3回目のアクセスはサーバ1に、といったようにアクセスを振り分ける。
ウェイト
ウェイトは、各サーバの負荷状況に応じて、アクセスを振り分ける方法である。各サーバにウェイトと呼ばれる値を割り当て、ウェイトの大きいサーバほどアクセスを少なく振り分ける。
ウェイトは、CPU使用率やメモリ使用率などの負荷状況を監視し、自動的に更新される。また、手動で設定することも可能である。
ヘルスチェック
ヘルスチェックは、各サーバの状態を監視し、正常なサーバにのみアクセスを振り分ける方法である。各サーバにヘルスチェック用のURLを設定し、ロードバランサーが定期的にアクセスすることで、サーバの状態をチェックする。
ヘルスチェックでは、応答が返ってきたサーバのみにアクセスを振り分ける。応答が返ってこなかったサーバは、障害が疑われるため、アクセスを振り分けないようにする。
ロードバランサーは、負荷分散だけでなく、以下の機能をも備えている。
- アクセス制御:アクセス元のIPアドレスやHTTPヘッダーなどの条件で、アクセスを制御することができる。
- ロードバランシングポリシー:負荷分散のアルゴリズムや優先度を設定することができる。
- ロードバランスログ:アクセスの処理状況を記録することができる。
ロードバランサーは、ITシステムの安定運用に欠かせない重要な装置である。ロードバランサーの仕組みと機能を理解することで、適切なロードバランサーを選択・導入し、効果的に活用することができる。
ロードバランサーのメリット
サーバの性能向上
ロードバランサーを導入することで、1つのサーバに集中する負荷を軽減することができる。これにより、サーバのCPU使用率やメモリ使用率を抑えることができ、サーバのパフォーマンスを向上させることができる。
例えば、1台のサーバで1000件のアクセスを処理する場合、CPU使用率やメモリ使用率が100%に達し、パフォーマンスが低下する可能性がある。しかし、ロードバランサーを導入して2台のサーバに負荷を分散することで、CPU使用率やメモリ使用率を50%に抑えることができ、パフォーマンスを向上させることができる。
可用性の向上
ロードバランサーを導入することで、1つのサーバが故障した場合でも、他のサーバにアクセスを振り分けることで、サービス提供の継続を可能にすることができる。
例えば、1台のサーバでWebサービスを提供している場合、サーバが故障した場合、Webサービスは利用できなくなる。しかし、ロードバランサーを導入して複数のサーバに負荷を分散することで、1台のサーバが故障しても、他のサーバでサービスを提供し続けることができる。
セキュリティの向上
ロードバランサーを導入することで、アクセス制御を行うことで、不正アクセスを防ぐことができる。
例えば、ロードバランサーでアクセス元のIPアドレスやHTTPヘッダーなどの条件で、アクセスを制御することで、不正アクセスを防ぐことができる。
ロードバランサーは、ITシステムの安定運用に欠かせない重要な装置である。ロードバランサーを導入することで、サーバの性能向上、可用性の向上、セキュリティの向上を実現できる。
ロードバランサーの種類
ロードバランサーには、大きく分けて以下の2つの種類がある。
ハードウェアロードバランサー
ハードウェアロードバランサーは、専用のハードウェアで構成されたロードバランサーである。高性能で安定した負荷分散が可能である。
ハードウェアロードバランサーのメリットは、以下のとおりである。
- 高性能:専用のハードウェアを採用しているため、高いパフォーマンスを実現できる。
- 安定性:専用のハードウェアを採用しているため、安定した運用が可能である。
- 拡張性:ハードウェアを追加することで、負荷分散能力を拡張することができる。
ハードウェアロードバランサーのデメリットは、以下のとおりである。
- コスト:ソフトウェアロードバランサーに比べて高価である。
- 運用コスト:ハードウェアの設置や保守・運用にコストがかかる。
ソフトウェアロードバランサー
ソフトウェアロードバランサーは、ソフトウェアで構成されたロードバランサーである。ハードウェアロードバランサーに比べて安価で導入しやすい。
ソフトウェアロードバランサーのメリットは、以下のとおりである。
- コスト:ハードウェアロードバランサーに比べて安価である。
- 導入のしやすさ:ソフトウェアをインストールするだけで導入できる。
- 拡張性:ソフトウェアを追加することで、負荷分散能力を拡張することができる。
ソフトウェアロードバランサーのデメリットは、以下のとおりである。
- 性能:ハードウェアロードバランサーに比べて性能が劣る場合がある。
- 安定性:ハードウェアロードバランサーに比べて安定性が劣る場合がある。
ロードバランサーの製品
ロードバランサーには、ハードウェア専用機(アプライアンス)、ソフトウェアベース、クラウドの3つの形態がある。ハードウェア専用機は、高性能で安定した動作が求められる環境に適している。ソフトウェアベースは、コストパフォーマンスに優れ、柔軟な拡張性を持つ。クラウドは、初期費用を抑えてすぐに利用を開始できる。
ハードウェア専用機(アプライアンス)
ハードウェア専用機は、ロードバランサー専用に設計された専用機である。高性能なCPUやメモリを搭載しており、大規模な環境でも安定した動作を実現できる。また、ハードウェアの性能を最大限に活用できるため、ソフトウェアベースと比較して高いパフォーマンスを発揮できる。
代表的な製品としては、以下のようなものがある。
- F5 Networks BIG-IP Local Traffic Manager(LTM)
- Cisco Application Delivery Controller(ADC)
- Juniper Networks MXシリーズ
ソフトウェアベース
ソフトウェアベースは、サーバや仮想マシンにインストールしてロードバランサーとして利用するソフトウェアである。ハードウェア専用機と比較してコストパフォーマンスに優れ、柔軟な拡張性を持つ。また、ハードウェア専用機と比較して導入や運用が容易である。
代表的な製品としては、以下のようなものがある。
- Microsoft Azure Load Balancer
- Amazon Elastic Load Balancing(ELB)
- Google Cloud Load Balancing(GLB)
クラウドベース(AWS、Azureなど)
また、AWSやAzureなどのクラウドサービスにもロードバランサーサービスが提供されている。クラウドベースでは、初期費用を抑えてすぐに利用を開始できる。また、ハードウェアやソフトウェアの管理が不要なため、運用負荷を軽減できるメリットがある。
代表的な製品としては、以下のようなものがある。
- Amazon Elastic Load Balancing(ELB)
- Google Cloud Load Balancing(GLB)
- Microsoft Azure Load Balancer
ロードバランサーの製品を選択する際には、以下の点を考慮する必要がある。
- 負荷分散の規模:ロードバランサーにかける負荷の規模を把握する。
- 負荷分散の要件:負荷分散の要件(性能、安定性、拡張性など)を明確にする。
- 予算:ロードバランサーの導入コストと運用コストを検討する。
負荷分散の規模が小さい場合や、性能や安定性よりもコストを重視する場合は、ソフトウェアロードバランサーやクラウドロードバランサーが適している。負荷分散の規模が大きい場合や、性能や安定性が重要な場合は、ハードウェアロードバランサーが適している。
また、ロードバランサーの機能や性能は、製品によって異なる。複数の製品を比較検討し、自社のニーズに合ったロードバランサーを選択することが重要である。
ロードバランサーのデメリット
コスト
ロードバランサーは、サーバやネットワーク機器と同様に、導入コストと運用コストが発生する。
ハードウェアロードバランサーは、専用のハードウェアを必要とするため、ソフトウェアロードバランサーに比べて高価である。また、ハードウェアロードバランサーは、定期的な保守やメンテナンスが必要であり、運用コストもかかる。
ソフトウェアロードバランサーは、ソフトウェアをインストールするだけで導入できるため、ハードウェアロードバランサーに比べて導入コストが安価である。しかし、ソフトウェアロードバランサーも、定期的なアップデートやセキュリティパッチの適用が必要であり、運用コストはかかる。
管理コスト
ロードバランサーを導入すると、ロードバランサーの設定や運用を行う必要がある。ロードバランサーは、負荷分散のアルゴリズムや優先度、アクセス制御のルールなどを設定する必要がある。また、ロードバランサーの運用には、サーバやネットワークの知識に加えて、ロードバランサーの専門知識も必要である。
パフォーマンスの低下
ロードバランサーは、外部からのアクセスを1つのサーバで受け付け、各サーバに負荷を分散する。ロードバランサーの処理に時間がかかると、パフォーマンスが低下する可能性がある。
ロードバランサーの処理速度は、ロードバランサーのハードウェアやソフトウェアの性能によって異なる。また、負荷分散のアルゴリズムによっても、処理速度が異なる。
セキュリティホール
ロードバランサーは、ソフトウェアプログラムであるため、脆弱性が発生する可能性がある。脆弱性を利用されると、ロードバランサーを乗っ取られたり、不正アクセスが行われたりする可能性がある。
ロードバランサーの脆弱性対策として、ロードバランサーのソフトウェアを最新の状態に保つことや、セキュリティパッチを適用することが重要である。また、ロードバランサーのアクセス制御を適切に設定することで、不正アクセスのリスクを低減することができる。
ロードバランサーを導入する際には、メリットとデメリットを十分に検討し、自社に適したロードバランサーを選択することが重要である。
ロードバランサーとリバースプロキシの違い
ロードバランサーとリバースプロキシは、どちらも負荷分散やセキュリティ向上などの目的で利用されるネットワーク機器である。しかし、両者には以下な違いがある。
機能の違い
ロードバランサーは、アクセスの負荷分散や障害時の耐障害性向上、セキュリティの向上などの機能を備えている。一方、リバースプロキシは、アクセスのセキュリティ向上やコンテンツの配信、パフォーマンスの向上などの機能を備えている。
役割の違い
ロードバランサーは、複数のサーバやアプリケーションを1つの仮想サーバとして扱い、アクセスを分散する。一方、リバースプロキシは、クライアントからのアクセスをサーバやアプリケーションに転送する代理サーバーである。
配置場所の違い
ロードバランサーは、クライアントとサーバやアプリケーションの間に配置される。一方、リバースプロキシは、クライアントとサーバやアプリケーションの間に配置される。
まとめ
ロードバランサーは、複数のサーバーに負荷を分散させる装置である。負荷分散により、サーバの性能向上、可用性の向上、セキュリティの向上を実現できる。ロードバランサーを適切に導入することで、Webサイトやアプリケーションの安定的な運用を実現することができる。