AIOpsとは、人工知能(AI)と機械学習(ML)を活用して、IT運用を高度化・効率化・自動化することを目的とした運用手法である。
AIOpsの概要
IT運用は、ネットワーク、サーバー、アプリケーションなど、さまざまなITインフラストラクチャの監視・管理・保守などを行う業務である。近年、ITインフラストラクチャの複雑化・大規模化に伴い、IT運用の負荷は増大の一途をたどっている。
AIOpsは、このような状況を打破するために注目されている、IT運用の新たな手法である。AIOpsでは、IT運用に関連するさまざまなデータを収集・分析し、AIやMLの技術を用いて、異常の検知や原因特定、対策の自動化などを実現する。
AIOpsのメリット
AIOpsのメリットは、大きく分けて以下の3つが挙げられる。
問題解決のスピード向上
AIOpsは、膨大なIT運用データをリアルタイムに分析することで、異常や障害をいち早く検知することができる。また、AIが異常の原因を推定することもできるため、迅速かつ的確な対処が可能になる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、障害検知の時間を従来の3倍から1時間に短縮することに成功した。これにより、障害によるシステム停止時間を大幅に削減することができた。
運用コスト・人員の削減
AIOpsは、IT運用の自動化を実現することで、運用コストや人員の削減につながる。従来、IT運用には、大量のデータを収集・分析するための手作業や、複雑な問題の原因究明など、多くの人的リソースが必要であった。AIOpsを導入することで、これらの作業を自動化できるため、運用担当者の負担を軽減し、人材の有効活用を図ることができる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、運用人員を従来の10人から5人に削減することに成功した。これにより、運用コストを年間1億円以上削減することができた。
DX化の推進
AIOpsは、ITシステムのパフォーマンスや安定性を向上させることで、DX化の推進を後押しする。DX化は、ITを活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革する取り組みである。AIOpsを導入することで、ITシステムの基盤を強化し、DX化に必要な基盤を整備することができる。
AIOpsの活用例
AIOpsは、IT運用の効率化や高度化に大きなメリットをもたらすため、多くの企業で導入が進んでいる。以下に、AIOpsの活用例をいくつか紹介する。
障害検知の自動化
AIOpsは、膨大なIT運用データをリアルタイムに分析することで、異常や障害をいち早く検知することができる。また、AIが異常の原因を推定することもできるため、迅速かつ的確な対処が可能になる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、障害検知の時間を従来の3倍から1時間に短縮することに成功した。これにより、障害によるシステム停止時間を大幅に削減することができた。
アラート対応の自動化
AIOpsは、アラートの意味や優先度を自動で判断し、適切な対応を自動化することもできる。これにより、運用担当者の負担を軽減し、迅速な対応を実現することができる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、アラート対応の時間を従来の5倍から1時間に短縮することに成功した。これにより、運用担当者の業務効率を向上させることができ、より重要な業務に集中することができるようになった。
リソースの自動調整
AIOpsは、ITシステムのパフォーマンスや負荷を予測することで、リソースを自動調整することもできる。これにより、システムのパフォーマンスを向上させ、障害のリスクを低減することができる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、システムのパフォーマンスを従来の1.5倍に向上させることに成功した。これにより、システムの安定性を向上させ、ビジネスの継続性を高めることができた。
運用データの可視化
AIOpsは、IT運用データを可視化することで、運用担当者の意思決定を支援することができる。これにより、運用の効率化や改善を図ることができる。
例えば、ある企業では、AIOpsを導入したことで、運用データをグラフや表形式で可視化することに成功した。これにより、運用担当者は、ITシステムの状況を直感的に把握できるようになり、迅速な意思決定が可能になった。
AIOpsの課題
AIOpsは、IT運用の効率化や高度化に大きなメリットをもたらすが、導入にはいくつかの課題がある。
データ量と質
AIOpsは、膨大なIT運用データを分析して学習することで、異常や障害を検知したり、予測したりする。そのため、データ量と質が十分に確保されていないと、AIOpsの精度が低下する可能性がある。
例えば、データ量が不足していると、異常や障害を検知する機会が減り、検知率が低下する。また、データの質が悪いと、AIが誤った学習をしてしまい、誤検知や過検知が発生する可能性がある。
プロンプトの例
- 「CPU使用率が急上昇しました。原因は何でしょうか?」
データ量が不足していると、CPU使用率が急上昇する原因を特定できない可能性がある。また、データの質が悪いと、CPU使用率の急上昇が異常ではないと誤学習してしまい、誤検知が発生する可能性がある。
2運用担当者のスキル
AIOpsは、高度なAI技術を活用したツールであるため、運用担当者のスキルが求められる。運用担当者は、AIOpsの基本的な機能や仕組みを理解し、適切に運用できるスキルを身につける必要がある。
例えば、AIOpsのアラートをどのように処理するか、異常や障害をどのように対処するかなどの判断は、運用担当者のスキルに依存する。運用担当者のスキルが不足していると、AIOpsを有効活用できない可能性がある。
3コスト
AIOpsツールは、高価なものが多い。また、AIOpsを導入・運用するためには、運用担当者のスキルアップや、データの収集・分析のための環境構築などのコストも必要になる。
これらの課題を解決するためには、データの収集・分析体制の整備や、運用担当者のスキルアップのための教育・研修などが必要になる。また、AIOpsツールの選定にあたっては、データ量や質、運用担当者のスキル、コストなどの要件を十分に検討することが重要である。
AIOpsのツール
AIOpsを実践するために、さまざまなツールが開発・提供されている。これらのツールは、ITインフラストラクチャのデータを収集・分析し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復などの機能を提供する。
代表的なAIOpsツール
- IBM Watson AIOps:IBMが提供するAIOpsツール。AIを活用してITインフラストラクチャのデータを分析し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復を行う。
- Dynatrace:Dynatraceが提供するAIOpsツール。AIと機械学習を活用して、ITインフラストラクチャの全体像を可視化し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復を行う。
- AppDynamics:AppDynamicsが提供するAIOpsツール。アプリケーションのパフォーマンスとユーザーエクスペリエンスを分析し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復を行う。
- OpsRamp:OpsRampが提供するAIOpsツール。ITインフラストラクチャのデータを統合的に管理し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復を行う。
- Loggly:Logglyが提供するAIOpsツール。ログデータを分析し、問題の検出、根本原因の特定、自動修復を行う。
AIOpsツールの導入効果
AIOpsツールを導入することで、以下の効果が期待できる。
- ITインフラストラクチャの可用性向上:問題を早期に検出し、自動的に修復することで、ITインフラストラクチャの可用性を向上させることができる。
- IT運用の効率化:手動による作業を削減し、IT運用の効率化を図ることができる。
- コスト削減:ITインフラストラクチャのダウンタイムを削減し、コストを削減できる。
まとめ
AIOpsは、IT運用の効率化・自動化を実現する新たな手法として注目されている。AIOpsを導入することで、IT運用の負荷を軽減し、サービスの安定性向上やコスト削減などに貢献することができる。