ウォーターフォール開発とは、システム開発において、上流工程から下流工程へと順番に開発を進めていく開発手法である。ウォーターフォール(Waterfall)は英語で「滝」を意味し、上から下へと流れ落ちるように、各工程が連続して進んでいく様子を表している。
ウォーターフォール開発の歴史
ウォーターフォール開発は、ソフトウェア開発の手法の一つである。その歴史は古く、1960年代に遡る。
1960年代
当時は、ソフトウェア開発は職人芸的な方法で行われていた。経験豊富な開発者が、自分の経験や勘を頼りにソフトウェアを開発していたのである。しかし、ソフトウェア開発の規模が大きくなるにつれて、この方法では限界が生じるようになった。
1970年代
1970年代になると、ソフトウェア開発を工業製品の製造過程のように捉え、体系的に管理しようとする動きが出てきた。その代表的なものが、ウォーターフォール開発である。
ウォーターフォール開発は、ソフトウェア開発を要件定義、設計、実装、テスト、運用という一連の工程に分割し、各工程を順次進めていく手法である。この手法は、明確な成果物が作成されるというメリットがある一方で、途中で仕様変更が難しいというデメリットもある。
1980年代以降
1980年代以降、ウォーターフォール開発は広く普及した。しかし、ソフトウェア開発のニーズが多様化になると、ウォーターフォール開発のデメリットが顕著になるようになった。
2000年代以降
2000年代以降になると、アジャイル開発のような新しい開発手法が登場してきた。アジャイル開発は、ウォーターフォール開発とは対照的に、顧客との密接なコミュニケーションを重視し、変化に柔軟に対応できる手法である。
近年は、ウォーターフォール開発とアジャイル開発のそれぞれのメリットを活かしたハイブリッド開発と呼ばれる手法も注目されている。
ウォーターフォール開発の工程
ウォーターフォール開発の各工程の概要は、以下のとおりである。
計画
計画工程では、システムの要件を定義し、開発計画を策定する。
具体的には、以下の作業を行う。
- 顧客の要望をヒアリングする
- システムの機能や性能を定義する
- 開発スケジュールや予算を策定する
設計
設計工程では、システムの構造や仕様を設計する。
具体的には、以下の作業を行う。
実装
実装工程では、設計に基づいて、プログラムを開発する。
具体的には、以下の作業を行う。
テスト
テスト工程では、開発したプログラムの品質を検証する。
具体的には、以下の作業を行う。
- 単体テスト
- 結合テスト
- システムテスト
運用
運用工程では、システムを本番環境に導入し、運用する。
具体的には、以下の作業を行う。
- システムの導入
- 運用手順の作成
- 運用管理
保守
保守工程では、システムの不具合を修正したり、機能追加や改修を行う。
具体的には、以下の作業を行う。
- バグ修正
- 機能追加
- 改修
ウォーターフォール開発では、各工程が完了すると、次の工程に進む。そのため、各工程の完了前に、次の工程に進むための準備を完了しておくことが重要である。また、ウォーターフォール開発では、各工程間の連携やコミュニケーションが重要である。そのため、各工程の責任者や関係者間で、密にコミュニケーションをとることが重要である。
ウォーターフォール開発のメリット
計画通りに開発を進めやすい
ウォーターフォール開発では、各工程の完了前に次の工程に進むことが許可されないため、計画通りに開発を進めやすい。
これは、各工程の完了時に、次の工程に進むための準備が完了していることを意味する。そのため、工程間の連携やコミュニケーションのミスを防ぐことができる。
品質管理がしやすい
ウォーターフォール開発では、各工程でテストを行うため、品質管理がしやすい。
各工程でテストを行うことで、工程ごとに品質を確保することができる。また、各工程のテスト結果を次の工程にフィードバックすることで、品質を継続的に向上させることができる。
プロジェクト管理がしやすい
ウォーターフォール開発では、各工程の完了までに必要な工数やコストを予測しやすいため、プロジェクト管理がしやすい。
各工程の完了までに必要な工数やコストを予測することで、プロジェクト全体のスケジュールや予算を管理しやすくなる。
ウォーターフォール開発のデメリット
変更に対応しにくい
ウォーターフォール開発では、各工程が完了すると、次の工程に進むため、変更に対応しにくい。
これは、各工程の完了時に、次の工程に進むための準備が完了していることを意味する。そのため、工程間の連携やコミュニケーションのミスを防ぐことができる。
しかし、要求や環境の変化によって、変更が必要になることもある。変更が発生した場合、後工程の修正が必要となり、スケジュールやコストの遅延や増加につながる可能性がある。
例えば、システムの要件が変更になった場合、設計や実装の工程をやり直す必要がある。また、技術の進歩によって、新たな技術を利用した方が効率的になった場合、設計や実装の工程を修正する必要がある。
柔軟性に欠ける
ウォーターフォール開発は、計画通りに開発を進めることを重視するため、柔軟性に欠ける。
要求や環境の変化に対応するためには、計画の変更が必要となる場合があるが、計画の変更は容易ではない。
例えば、顧客から新たな要望が提出された場合、計画の変更が必要となる。しかし、計画の変更は、工程間の連携やコミュニケーションのミスを招く可能性がある。
また、計画の変更は、スケジュールやコストの遅延や増加につながる可能性がある。
技術の進歩に対応しにくい
ウォーターフォール開発では、各工程の完了までに必要な技術を予測する必要がある。
しかし、技術の進歩は速く、予測通りに技術が進歩しないこともある。技術の進歩に対応するためには、計画の変更が必要となるが、計画の変更は容易ではない。
例えば、システムの開発を開始した時点では、最新の技術が利用可能だったとしても、開発が完了する頃には、さらに新しい技術が開発されている可能性がある。
その場合、最新の技術を利用するためには、計画の変更が必要となる。しかし、計画の変更は、スケジュールやコストの遅延や増加につながる可能性がある。
ウォーターフォール開発に向くプロジェクト
ウォーターフォール開発のメリットを最大限に活かすためには、要求が明確で、変更の少ないプロジェクトであることが重要である。
要求が明確なプロジェクト
ウォーターフォール開発では、各工程の完了前に次の工程に進むため、要求が明確であることが重要である。
要求が明確であれば、各工程で何をすべきかが明確になり、工程間の連携やコミュニケーションのミスを防ぐことができる。
変更の少ないプロジェクト
ウォーターフォール開発では、各工程が完了すると、次の工程に進むため、変更に対応しにくい。
そのため、要求や環境の変化によって変更が発生する可能性が低いプロジェクトであることが重要である。
ウォーターフォール開発に向くプロジェクトの例
ウォーターフォール開発に向くプロジェクトの例としては、以下のようなものが挙げられる。
- 既存システムの機能追加や改修
- 規模が小さいシステムの開発
- 要求が明確なシステムの開発
- 技術の進歩の影響を受けにくいシステムの開発
ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い
ウォーターフォール開発と対比される開発手法として、アジャイル開発がある。アジャイル開発は、ウォーターフォール開発とは異なり、各工程を短いサイクルで繰り返しながら開発を進める手法である。
アジャイル開発は、要求変更に対応しやすいことや、開発にかかる時間とコストを抑えられることなどのメリットがある。一方、品質管理が難しいことや、プロジェクトの予算やスケジュールを立てにくいなどのデメリットもある。
ウォーターフォール開発とアジャイル開発は、どちらが優れているという単純な答えはない。プロジェクトの特性や要求に合わせて、適切な開発手法を選択することが重要である。
まとめ
ウォーターフォール開発は、6つの工程を順次に実行していく開発手法である。
各工程の概要を理解し、各工程の完了前に準備を完了しておくことで、スムーズな開発を進めることができる。ウォーターフォール開発は、品質管理がしやすい、進捗管理がしやすい、プロジェクトの予算やスケジュールを立てやすいなどのメリットがある。一方、要求変更に対応しにくい、開発に時間とコストがかかる、柔軟性に欠けるなどのデメリットもある。
ウォーターフォール開発は、要求が明確で変化が少ないプロジェクトに適した開発手法である。