UPS(無停電電源装置)とは、停電時に一定時間、電力を供給できる装置である。
通常、コンピュータやその他の重要な機器を保護するために使用される。
UPSの仕組み
UPSは、バッテリーとインバーターを中心に構成されている。
バッテリー
UPSの心臓部とも言えるのがバッテリーである。商用電源からの電力を常に充電しており、停電時にはこの蓄えられた電力を使って機器への電力供給を継続する。バッテリーの容量によって、停電時に電力を供給できる時間が決まる。
インバーター
インバーターは、バッテリーに蓄えられた直流電力を、機器が利用できる交流電力に変換する役割を持つ。停電時には、このインバーターがバッテリーからの電力を使って機器への電力供給を継続する。
その他の構成要素
UPSには、バッテリーとインバーター以外にも様々な構成要素がある。
- 整流器: 商用電源からの交流電力を直流電力に変換し、バッテリーへの充電を行う。
- 充電器: バッテリーを最適な状態で充電するための装置である。
- バイパス回路: UPS本体が故障した場合などに、商用電源からの電力を直接機器に供給するための回路である。
UPSの動作
UPSは、通常運転時と停電時で動作が異なる。
- 通常運転時: 商用電源からの電力を整流器で直流に変換し、バッテリーへの充電と機器への電力供給を同時に行う。
- 停電時: 商用電源からの電力供給が停止すると、バッテリーからの電力を使ってインバーターが機器への電力供給を継続する。
UPSの種類
UPSは、その動作方式によっていくつかの種類に分けられる。主な種類は以下の通り。
オフラインUPS
最も基本的なUPSである。通常運転時は商用電源をそのまま機器に供給し、停電時にバッテリーからの電力供給に切り替わる。切り替え時にわずかな時間電圧が不安定になるため、精密機器には向かない場合がある。
ラインインタラクティブUPS
オフラインUPSに電圧調整機能を追加したUPSである。商用電源の電圧変動を補正し、安定した電圧を機器に供給できる。オフラインUPSよりも高性能だが、停電時の切り替え時間はオフラインUPSと同様である。
オンラインUPS
常にインバーターを介して機器に電力を供給するUPSである。商用電源の有無に関わらず安定した電圧と周波数の電力を供給できるため、精密機器に最適である。しかし、他のUPSと比べて価格が高い。
常時インバーター給電方式UPS
オンラインUPSの一種で、常にインバーターを介して機器に電力を供給する。オンラインUPSとの違いは、商用電源が停電した際にバッテリーへの切り替えが不要な点である。そのため、停電時の切り替え時間がなく、より安定した電力を供給できる。
デルタ変換オンラインUPS
オンラインUPSの一種で、デルタ変換回路を用いて商用電源とバッテリーからの電力を合成し、機器に供給する。オンラインUPSよりも効率が高く、小型化が可能である。 UPSを選ぶ際には、機器の種類や重要度、予算などを考慮して適切な種類を選ぶ必要がある。
UPSの用途
UPSは、以下のような幅広い用途で利用されている。
1. データセンター
データセンターでは、サーバーやネットワーク機器の安定稼働を確保するため、UPSが不可欠である。停電などの異常事態が発生しても、UPSが電源を供給することで、データの損失や機器の破損を防ぐことができる。
2. 医療施設
医療施設では、患者の生命維持装置や医療機器の安定稼働が求められるため、UPSが必須である。停電時にも、UPSが電力を供給することで、患者の安全を確保して医療サービスの継続性を保つことができる。
3. 産業用設備
製造業やプロセス産業では、生産ラインや制御機器の安定稼働が重要である。UPSは、停電時の電源供給によって、生産プロセスの停止や機器の損傷を防ぎ、事業の継続性を確保する。
4. 通信設備
基地局や通信センターなどの通信設備では、安定した電源供給が不可欠である。UPSは、停電時にも電力を供給することで、通信サービスの途絶を防ぎ、社会インフラの維持に貢献する。
5. 家庭用
家庭用では、コンピューターやネットワーク機器、家電製品などの電源保護にUPSが使用される。停電時に、UPSが電力を供給することで、データの損失や機器の故障を防ぎ、快適な生活環境を維持できる。 他にも、UPSは以下のような用途でも広く利用されている。 金融機関:ATMやオンラインバンキングシステムの安定稼働 交通システム:信号機や鉄道運行システムの安定稼働 航空管制システム:管制システムや通信機器の安定稼働 教育機関:コンピューターラボや図書館の設備の電源保護 研究施設:実験機器やデータ保存システムの安定稼働 UPSは、さまざまな産業や施設において、停電などの異常事態から電源を保護し、事業の継続性や人々の安全を確保する重要な役割を果たしている。
UPSの代表的な製品
UPSは様々なメーカーから多種多様な製品が販売されている。ここでは、代表的な製品をいくつか紹介する。
オムロン BUシリーズ
個人から法人まで幅広いユーザーに支持される、オムロンのBUシリーズ。小型で設置場所を選ばず、家庭用からオフィス用まで幅広い用途に対応している。正弦波出力に対応しており、精密機器にも安心して使用できる。
シュナイダーエレクトリック APC Smart-UPSシリーズ
APC Smart-UPSシリーズは、世界中で高いシェアを誇るUPSである。豊富なラインナップから、用途に合わせた最適なモデルを選ぶことができる。ネットワーク管理機能も充実しており、企業のサーバー室などでの利用に最適だ。
CyberPower OLシリーズ
コストパフォーマンスに優れたUPSとして知られるCyberPowerのOLシリーズ。ラインインタラクティブ方式を採用しており、電圧変動から機器を保護する。タワー型とラックマウント型の両方をラインナップしており、設置場所に応じて選択できる。
富士電機 無停電電源装置 EX100シリーズ
富士電機のEX100シリーズは、高い信頼性と耐久性を誇るUPSである。長寿命バッテリーを搭載しており、長期間の運用にも対応できる。また、保守サービスも充実しており、安心して使用できる。
EATON 5Pシリーズ
EATONの5Pシリーズは、高効率で省スペースなUPSである。オンライン方式を採用しており、安定した電力を供給できる。また、LCDディスプレイを搭載しており、UPSの状態を簡単に確認できる。
まとめ
UPSは停電時の電力供給装置である。バッテリー、インバーター、コントローラーによって、瞬時に電力を供給し、機器を保護する。
UPSにはオフライン、ラインインタラクティブ、オンラインなどの種類があり、用途に応じて選択できる。また、UPSを選ぶ際には、必要な出力電力やバッテリー容量、出力波形、設置場所などを考慮する必要がある。各メーカーのウェブサイトやカタログなどで製品の詳細情報を比較検討することも重要だ。