ステートレスアーキテクチャとは、サーバーがリクエストごとに状態を保持しないアーキテクチャである。
ステートレスアーキテクチャの仕組み
具体的には、サーバーはリクエストごとに必要な情報をクライアントから受け取り、処理を完了したら、状態を保持せずにリソースを解放する。そのため、サーバーはリクエストごとに独立して動作し、スケールアウトや可用性の向上が容易になる。
ステートレスアーキテクチャの処理手順は、以下のとおり。
1. クライアントからリクエストの送信
クライアントは、サーバーAにリクエストを送信する。リクエストには、処理の種類や、処理に必要な情報などが含まれる。
2. サーバーAによる処理
サーバーAは、リクエストの内容に応じて処理を行う。処理には、データの検索や、データの更新、データの作成など、さまざまな処理が含まれる。
3. 処理の完了と状態のクリア
処理が完了すると、サーバーAは状態をクリアする。状態とは、処理を行う際に必要な情報を指す。
4. クライアントへのレスポンスの送信
処理が完了すると、サーバーAはクライアントにレスポンスを送信する。レスポンスには、処理の結果や、処理に必要な情報などが含まれる。
ステートレスアーキテクチャのメリット
スケーラビリティ
ステートレスアーキテクチャでは、サーバーの台数を増やすことによるスケーラビリティが向上する。
各サーバーは、クライアントからのリクエストに対して、状態を保持せずに処理を行うため、サーバーの台数を増やしても、システム全体の状態を維持することができる。
可用性
ステートレスアーキテクチャでは、サーバーの障害に起因するシステムの停止を防ぐことができる。
各サーバーは、状態を保持しないため、障害が発生したサーバーから別のサーバーに処理を振り分けることで、システムの継続的な稼働を可能にすることができる。
運用管理の容易性
ステートレスアーキテクチャでは、サーバーの状態を管理する必要がないため、運用管理が容易になる。
各サーバーは、クライアントからのリクエストに対して、状態を保持せずに処理を行うため、サーバーの状態を監視する必要がなくなる。
ステートレスアーキテクチャのデメリット
セッション管理の複雑化
ステートレスアーキテクチャでは、セッション管理を別途行う必要がある。
各サーバーは、状態を保持しないため、セッション情報をクライアント側またはデータベースに保存する必要がある。
これにより、セッション管理の複雑化や、セッション情報の同期の必要性が生じる。
機能の制限
ステートレスアーキテクチャでは、状態を保持できないため、セッションに依存する機能の実現が難しい。
例えば、ログイン状態を保持する機能や、カート機能などは、ステートレスアーキテクチャでは実現が難しい。
パフォーマンスの低下
ステートレスアーキテクチャでは、セッション情報をクライアント側またはデータベースに保存するため、パフォーマンスの低下が懸念される。
セッション情報をクライアント側に保存する場合は、セッション情報をクライアントに送信する必要があるため、ネットワーク帯域の使用量が増加する。
セッション情報をデータベースに保存する場合は、データベースへのアクセスが発生するため、処理時間が遅延する可能性がある。
ステートレスアーキテクチャとステートフルアーキテクチャの違い
ステートレスアーキテクチャは、処理を行う際のみ情報を保持し、処理が完了すると状態をクリアしても良い、またはクリアしなければならないシステムに適している。具体的には、以下のような例が挙げられる。
一方、ステートフルアーキテクチャでは、各サーバーは状態を保持する。各サーバーは、処理を行う際に必要な情報に加えて、処理の途中経過や結果などの情報を保持するシステムで使用される。具体的には、以下のような例が挙げられる。
- ゲーム
- チャットシステム
- オンラインショッピングのカート機能
これらのシステムは、処理の途中経過や結果を保持することで、より複雑な処理を実現することができる。
ステートレスアーキテクチャの適用例
Webサービス
Webサービスは、多くのユーザーがアクセスするため、スケーラビリティや可用性が求められる。ステートレスアーキテクチャは、これらの要件を満たすため、Webサービスに広く採用されている。
例えば、ショッピングサイトやソーシャルメディアなどのWebサービスでは、多くのユーザーが同時にアクセスするため、ステートレスアーキテクチャが採用されている。
クラウドサービス
クラウドサービスは、オンデマンドで必要なリソースを追加することができるため、スケーラビリティが求められる。ステートレスアーキテクチャは、これらの要件を満たすため、クラウドサービスに広く採用されている。
例えば、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどのクラウドサービスでは、利用者の増加に合わせて、サーバーを追加することで、システムの処理能力や性能を拡張することができる。
分散処理システム
分散処理システムは、複数のサーバーで処理を分散して行うため、可用性が求められる。ステートレスアーキテクチャは、これらの要件を満たすため、分散処理システムに広く採用されている。
例えば、ビッグデータの分析やシミュレーションなどの処理を行うシステムでは、ステートレスアーキテクチャが採用されている。
これらのシステムでは、スケーラビリティや可用性が求められるため、ステートレスアーキテクチャが有効な手段である。
また、ステートレスアーキテクチャは、以下のようなシステムにも適用されている。
リアルタイム性やパフォーマンスが重要でないシステム
ステートレスアーキテクチャでは、セッション情報をクライアント側またはデータベースに保存するため、パフォーマンスの低下が懸念される。
そのため、リアルタイム性やパフォーマンスが重要でないシステムに適用されることが多い。
ユーザーの利便性が重要でないシステム
ステートレスアーキテクチャでは、セッションに依存する機能の実現が難しい。
そのため、ユーザーの利便性が重要でないシステムに適用されることが多い。
まとめ
ステートレスアーキテクチャは、サーバーがリクエストごとに状態を保持しないアーキテクチャである。スケールアウトや可用性の向上、リソースの効率的な利用、セキュリティの向上などのメリットがあるが、クライアント側の処理の増加、ネットワーク帯域の消費量の増加、認証やトランザクション管理の複雑化などのデメリットもある。システムの要件や運用環境に合わせて、適切に適用することが重要である。