ラピッドプロトタイピングとは、製品開発において、従来の手法よりも短期間で試作品を製作する技術である。ラテン語で「迅速（rapid）」と「試作（prototype）」を組み合わせた造語である。
従来、試作品は粘土や木を用いて職人が製作する方法が一般的であった。しかし、この方法では時間がかかり、コストも高くつく。ラピッドプロトタイピングは、これらの問題を解決するために開発された技術である。
ラピッドプロトタイピングの種類
アディティブ法
アディティブ法とは、材料を積み重ねて立体物を製作する技術である。代表的な方法としては、以下のようなものが挙げられる。
- 3Dプリンティング
3Dプリンティングは、コンピューター上で作成した3Dデータをもとに、立体物を直接出力する技術である。ラピッドプロトタイピングの代表的な方法として、近年注目を集めている。
3Dプリンティングには、さまざまな方式がある。代表的な方式としては、以下のようなものが挙げられる。
* 熱溶解積層法（FDM）
* 光造形法
* 粉末焼結法
* シート積層法
* インクジェット法
- 射出成形
射出成形は、加熱した樹脂を金型に注入して、立体物を成形する技術である。大量生産に適した方法であるが、試作品の製作にも用いることができる。
- 積層造形
積層造形は、材料を層状に堆積させて、立体物を製作する技術である。3Dプリンティングの一種であるが、3Dプリンティングと比較して、より複雑な形状の試作品を製作できる。
アディティブ法は、短時間で試作品を製作できるというメリットがある。また、複雑な形状の試作品を製作することも可能である。一方で、造形精度が低い場合がある。
サブトラクション法
サブトラクション法とは、ブロック状の材料から必要な部分を削り出して、立体物を製作する技術である。代表的な方法としては、以下のようなものが挙げられる。
- CNC加工
CNC加工は、コンピューター制御の機械工具を用いて、材料を削り出して立体物を製作する技術である。複雑な形状の試作品を製作できる。
- レーザー加工
レーザー加工は、レーザー光を用いて、材料を焼き切ったり、溶接したりして、立体物を製作する技術である。
- 水切り加工
水切り加工は、水の圧力を用いて、材料を削り出して立体物を製作する技術である。
サブトラクション法は、造形精度が高いというメリットがある。また、複雑な形状の試作品を製作することも可能である。一方で、製作時間が長くなる場合がある。
ラピッドプロトタイピングのメリット
ラピッドプロトタイピングには、以下の利点がある。
短期間・低コストで試作品を製作できる
従来の手法と比較して、ラピッドプロトタイピングは、短期間・低コストで試作品を製作できる。そのため、製品開発の初期段階から、頻繁に試作を行い、フィードバックを得ながら、製品の設計を改善することができる。
製品の機能や性能を検証しやすい
試作品を実際に手に取り、操作することで、製品の機能や性能を検証しやすくなる。そのため、製品の設計変更を最小限に抑えることができ、開発コストを削減することができる。
市場投入までの時間を短縮できる
製品の設計を迅速に改善することで、市場投入までの時間を短縮することができる。そのため、競合他社に先駆けて製品を市場に投入することができる。
顧客のニーズを的確に把握できる
試作品を顧客に提示することで、顧客のニーズを的確に把握することができる。そのため、顧客の満足度を高めることができる。
コラボレーションを促進する
試作品を活用することで、設計者、製造者、営業者など、さまざまな関係者とのコラボレーションを促進することができる。そのため、より優れた製品を開発することができる。
ラピッドプロトタイピングの活用例
自動車や家電などの製造業
自動車や家電などの製造業では、ラピッドプロトタイピングを用いて、新製品の設計や開発を行っている。
例えば、自動車メーカーでは、新車のデザインや性能を検証するために、ラピッドプロトタイピングを用いて、実物の試作品を製作している。また、家電メーカーでは、新製品の機構や機能を検証するために、ラピッドプロトタイピングを用いて、実物の試作品を製作している。
医療機器や航空宇宙産業
医療機器や航空宇宙産業では、ラピッドプロトタイピングを用いて、製品の設計や開発を行っている。
例えば、医療機器メーカーでは、新製品の安全性や有効性を検証するために、ラピッドプロトタイピングを用いて、実物の試作品を製作している。また、航空宇宙メーカーでは、新製品の構造や機能を検証するために、ラピッドプロトタイピングを用いて、実物の試作品を製作している。
デザインや建築など
デザインや建築などでは、ラピッドプロトタイピングを用いて、製品や建築物のデザインを検証している。
例えば、デザイナーや建築家は、ラピッドプロトタイピングを用いて、デザインのアイデアを形にしたり、顧客の意見を反映したりしている。
ラピッドプロトタイピングの欠点
ラピッドプロトタイピングには、以下の欠点もある。
簡易なプロトタイプでは、実際のソフトウェアと仕様が異なる可能性がある
ラピッドプロトタイピングでは、短時間で簡易なプロトタイプを作成するため、実際のソフトウェアと仕様が異なる可能性がある。そのため、プロトタイプを作成した後に、仕様を修正する必要が生じる場合がある。
プロトタイプ作成に時間や労力がかかる場合がある
ラピッドプロトタイピングでは、短時間でプロトタイプを作成することを重視するが、プロトタイプ作成に時間や労力がかかる場合がある。そのため、ラピッドプロトタイピングを実施する際には、プロトタイプ作成にかかる時間や労力を十分に考慮する必要がある。
プロトタイプを作成した後に、仕様が変更される可能性がある
ユーザーのフィードバックを得るために、プロトタイプを作成するが、プロトタイプを作成した後に、仕様が変更される可能性がある。そのため、プロトタイプを作成した後は、仕様が変更されていないかを確認する必要がある。
ラピッドプロトタイピングを実施する際には、これらの欠点に留意して、適切に活用することが重要である。
ラピッドプロトタイピングとアジャイルの違い
ラピッドプロトタイピングとアジャイルは、どちらも製品開発において重要な役割を果たす技術である。しかし、両者には、それぞれに特徴があり、異なる目的で用いられる。
ラピッドプロトタイピングとアジャイルの違いは、以下の表の通りである。
ラピッドプロトタイピングは、製品開発の初期段階において、製品の機能や性能を検証するために用いられる。一方、アジャイルは、ソフトウェア開発において、顧客のニーズを迅速に反映した製品を開発するために用いられる。
両者を組み合わせることで、より効果的な製品開発が可能になる。例えば、ラピッドプロトタイピングを用いて製品の初期設計を検証し、アジャイルを用いて顧客のフィードバックを取り入れながら、製品を完成させるといった方法がある。
まとめ
ラピッドプロトタイピングは、製品開発において、短期間・低コストで試作品を製作する技術である。製品開発の初期段階から、頻繁に試作を行い、フィードバックを得ながら、製品の設計を改善することで、開発コストを削減し、製品の品質を向上させることができる。
ラピッドプロトタイピングとアジャイルは、どちらも製品開発において重要な技術である。両者には、それぞれに特徴があり、異なる目的で用いられる。両者を組み合わせることで、より効果的な製品開発が可能になる。