クロスサイトスクリプティング(XSS)とは、Webアプリケーションの脆弱性を利用し、悪意のあるスクリプトを不特定多数のユーザーのブラウザに実行させる攻撃である。
クロスサイトスクリプティングの仕組み
Webアプリケーションは、ユーザーからの入力データを表示したり、処理したりする機能を有している。攻撃者は、ユーザーからの入力データに悪意のあるスクリプトを埋め込み、そのスクリプトを表示する機能を悪用して攻撃を行う。
例えば、攻撃者が掲示板に「<script>alert(‘Hello World!’)</script>」というスクリプトを投稿したとすると、このスクリプトを実行すると、ユーザーのブラウザに「Hello World!」という警告メッセージが表示される。また、攻撃者が入力フォームに「<script>document.location=’https://www.example.com/'</script>」というスクリプトを入力したとすると、このスクリプトを実行すると、ユーザーは「https://www.example.com/」というWebサイトにリダイレクトされる。
このように、クロスサイトスクリプティングは、悪意のあるスクリプトをユーザーのブラウザに埋め込むことで、さまざまな被害を引き起こすことができる。
クロスサイトスクリプティングは、Webアプリケーションの種類を問わず、あらゆるWebアプリケーションで発生する可能性がある。特に、ユーザーからの入力データをそのまま表示する掲示板やSNS、ログインフォームなど、入力データの検証が不十分なWebアプリケーションは攻撃の標的になりやすい。
クロスサイトスクリプティングの種類
反射型(Reflected XSS)
ユーザーが入力した値をそのまま表示するWebサイトに攻撃者が悪意のあるスクリプトを仕掛ける攻撃である。攻撃者は、偽のアンケートやキャンペーンなどを利用して、ユーザーに悪意のあるスクリプトを入力させる。
ユーザーが悪意のあるスクリプトを入力すると、そのスクリプトは、Webサイトにリクエストを送信した際に、ユーザーのブラウザに返される。ユーザーが返されたスクリプトを実行すると、攻撃者は、ユーザーのブラウザをコントロールすることができる。
格納型(Stored XSS)
ユーザーの入力値をデータベースに保存するWebサイトに攻撃者が悪意のあるスクリプトを仕掛ける攻撃である。攻撃者は、掲示板やコメント欄などを利用して、悪意のあるスクリプトを入力させる。
ユーザーが悪意のあるスクリプトを入力すると、そのスクリプトは、データベースに保存される。他のユーザーがそのスクリプトを表示した際に、攻撃者は、ユーザーのブラウザをコントロールすることができる。
DOMベース(DOM Based XSS)
WebページのDOM(Document Object Model)を操作する悪意のあるスクリプトを仕掛ける攻撃である。DOMとは、Webページの構成要素をオブジェクトとして表現したモデルである。
クロスサイトスクリプティングの被害
クロスサイトスクリプティングの被害は、以下のようなものが挙げられる。
個人情報の窃取
攻撃者は、クロスサイトスクリプティングを利用して、ユーザーのログイン情報やクレジットカード情報などの個人情報を窃取することができる。
なりすまし
攻撃者は、クロスサイトスクリプティングを利用して、ユーザーになりすまし、ユーザーのアカウントに不正アクセスしたり、ユーザーの代わりに不正な操作を実行したりすることができる。
フィッシング
攻撃者は、クロスサイトスクリプティングを利用して、ユーザーを偽のWebサイトに誘導し、ユーザーの個人情報を詐取することができる。
サイト改ざん
攻撃者は、クロスサイトスクリプティングを利用して、攻撃対象のWebサイトを改ざんし、不正なコンテンツを表示したり、不正なリンクを表示したりすることができる。
クロスサイトスクリプティングの事例
YouTube
2010年7月、動画共有サイトのYouTubeでは、コメント投稿に関連するシステムがXSS攻撃を受け、デマニュースのポップアップが表示されたり、無関係なWebサイトにリダイレクトされたりといった被害が発生した。この攻撃により、YouTubeの利用者が不安や混乱に陥り、信用の失墜につながった。
2010年9月、ソーシャルメディアのTwitterでは、クロスサイトスクリプティングを通じて「マウスカーソルを載せただけで勝手に任意のテキストが投稿される」というワームが瞬く間に拡散した。このワームにより、Twitterの利用者のアカウントが乗っ取られ、さまざまな悪質な投稿が行われた。
ECサイト
2022年10月、通信販売会社のECサイトで、XSS攻撃による顧客情報の流出が発生した。この攻撃では、ECサイトのコメント機能に存在する脆弱性が悪用され、クレジットカードを含む個人情報が流出した。
クロスサイトスクリプティングは、WebサイトやWebアプリケーションの利用者であれば、誰もが被害者になる可能性がある。そのため、攻撃の被害を防ぐためには、WebサイトやWebアプリケーションの運営者、利用者双方が注意を払うことが重要である。
クロスサイトスクリプティングの対策
クロスサイトスクリプティングの対策としては、以下のようなものが挙げられる。
WebサイトやWebアプリケーションの運営者による対策
- 入力データの検証を徹底する
ユーザーから入力されたデータは、十分に検証してから表示したり、処理したりすることが重要である。
- 脆弱性の早期発見と対策を行う
WebサイトやWebアプリケーションには、常に脆弱性が潜んでいる可能性がある。そのため、脆弱性の早期発見と対策を行うことが重要である。
- セキュリティ対策ソフトの導入
セキュリティ対策ソフトを導入することで、攻撃の被害を未然に防ぐことができる。
利用者による対策
- 信頼できるWebサイトやWebアプリケーションのみ利用する
不審なWebサイトやWebアプリケーションは利用しないことが重要である。
- 最新のセキュリティソフトを導入する
最新のセキュリティソフトを導入することで、攻撃の被害を未然に防ぐことができる。
- 不審なメールやリンクは開かない
不審なメールやリンクは開かないように注意する。
まとめ
クロスサイトスクリプティングは、Webアプリケーションの脆弱性を利用した、非常に強力な攻撃である。Webアプリケーションの開発者や運用者は、クロスサイトスクリプティング攻撃のリスクを認識し、適切な対策を実施することが重要である。