BPMNとは?メリットや注意点などをわかりやすく解説

BPMNは、Business Process Model and Notationの略称であり、日本語では業務プロセスモデリング表記法と訳される。これは、業務プロセスの全体像を図式化するための国際標準規格であり、ITリテラシーの高いビジネスパーソンやシステム開発者にとって、業務理解、分析、改善、自動化に不可欠なツールである。




BPMNの構成要素

BPMNは、以下の4つの主要な構成要素から成り立つ。

1. フローオブジェクト

業務プロセスの各ステップを表す図形である。イベント、アクティビティ、ゲートウェイなど、様々な種類がある。

  • イベント: 業務プロセスの開始、終了、中断などを表す。
  • アクティビティ: 人やシステムが行う作業を表す。
  • ゲートウェイ: 業務プロセスの分岐や合流などを表す。

2. コネクティングオブジェクト

フローオブジェクト間の関係を表す矢印である。シーケンスフロー、メッセージフロー、関連など、様々な種類がある。

  • シーケンスフロー: 業務プロセスの実行順序を表す。
  • メッセージフロー: メッセージの送信・受信を表す。
  • 関連: 関連する情報間の関係を表す。

3. スイムレーン

業務プロセスに関わる部門や役割を表す区画である。

4. アーティファクト

データやメッセージなど、業務プロセスに関わる情報を表す図形である。

BPMNのメリット

 業務プロセスの理解が容易になる

BPMNは、直感的な図形を用いて業務プロセスを表現するため、専門知識がなくても理解しやすい。関係者間で共通認識を持ちやすく、コミュニケーションが円滑になる。従来の文書ベースの説明と比較して、全体像を俯瞰的に把握できる点が大きなメリットである。複雑な業務プロセスであっても、BPMN図を用いることで、各ステップの関係性や情報の流れを明確に表現することができる。

業務プロセスの分析が効率化される

BPMN図を用いることで、業務プロセスの現状を可視化し、問題点を分析しやすくなる。ボトルネックや無駄な作業などを明確に特定することで、改善策を検討しやすくなる。従来の属人的な分析方法と比較して、客観的かつ定量的な分析が可能になる点がメリットである。また、BPMNの標準的な記号体系を用いることで、関係者間で共通認識を持ちながら、効率的に分析を進めることができる。

業務プロセスの改善が促進される

BPMN図を用いて分析結果に基づいて、具体的な改善策を検討しやすくなる。無駄な作業を削減したり、効率的な手順を設計したりすることで、業務プロセスの改善を促進できる。従来の試行錯誤的な改善方法と比較して、計画的かつ効果的な改善が可能になる点がメリットである。さらに、BPMN図を共有することで、関係者間で改善策について議論しやすくなり、より効果的な改善を実現できる。

業務プロセスの自動化が容易になる

BPMN図は、ワークフローエンジンなどのツールを用いて、業務プロセスの自動化に活用できる。BPMN図を基に、自動化したい業務プロセスの各ステップをワークフローエンジンに設定することで、自動実行が可能になる。従来のプログラミングによる自動化と比較して、専門知識がなくても比較的容易に自動化できる点がメリットである。また、BPMNは国際標準規格であるため、様々なワークフローエンジンとの連携が可能である。

BPMNのサンプル

BPMN(Business Process Model and Notation)は、ビジネスプロセスを可視化するための標準的な表記法である。BPMNを用いることで、複雑なビジネスプロセスをわかりやすく表現し、関係者間で共有することができる。

BPMNには、イベント、アクティビティ、ゲートウェイ、プール、スイムレーンなど、様々な要素が存在する。これらの要素を組み合わせることで、様々なビジネスプロセスを表現することができる。

サンプル:注文処理プロセス

以下は、注文処理プロセスのサンプルである。

[開始イベント]
↓
[注文受付アクティビティ]
↓
[在庫確認アクティビティ]
↓
[在庫ありゲートウェイ]
    |   |
    |   |
  [はい]  [いいえ]
    |   |
    |   |
↓   ↓
[出荷準備アクティビティ]  [キャンセル通知アクティビティ]
↓
[出荷アクティビティ]
↓
[終了イベント]

このサンプルでは、顧客からの注文を受け、在庫を確認し、出荷するまでのプロセスを表現している。

また、以下は、顧客対応プロセスのサンプルである。

[開始イベント]
↓
[問い合わせ受付アクティビティ]
↓
[問い合わせ内容判別アクティビティ]
↓
[電話対応ゲートウェイ]
    |   |
    |   |
  [電話]  [メール]
    |   |
    |   |
↓   ↓
[電話対応アクティビティ]  [メール対応アクティビティ]
↓
[顧客満足度確認アクティビティ]
↓
[終了イベント]

このサンプルでは、顧客からの問い合わせを受け、内容に応じて電話またはメールで対応するプロセスを表現している。

BPMNの注意点

BPMNを利用する際には、以下の点に注意する必要がある。

正確な図を作成する

BPMN図は、業務プロセスの正確な表現である必要がある。誤った図を作成してしまうと、分析や改善に悪影響を及ぼす。以下の点に注意して図を作成する。

  • 標準的な記号体系を用いる
  • 各要素の意味を正しく理解する
  • 関係者間で共通認識を持つ

関係者間で共通認識を持つ

BPMN図は、関係者間で共通認識を持って作成・利用することが重要である。以下の点に注意する。

  • 用語や記号の意味を共通化する
  • 図作成の目的を明確にする
  • 作成過程において関係者間で意見交換を行う

目的に応じた図を作成する

BPMN図は、目的に応じて作成する必要がある。可視化、分析、改善、自動化など、目的に応じて必要な要素や表現方法が異なる。

  • 可視化: 全体像を把握しやすいようにシンプルな図を作成する
  • 分析: 問題点を特定しやすいように詳細な図を作成する
  • 改善: 改善策を検討しやすいように具体的な図を作成する
  • 自動化: ワークフローエンジンで実行しやすいように正確な図を作成する

BPMN関連ツール

BPMNをより効率的に活用するために、様々な関連ツールが開発されている。

 BPMN編集ツール

BPMN図を作成・編集するためのツールである。多くのツールは、ドラッグ&ドロップ操作で簡単に図を作成できる。また、標準的なBPMN記号のほか、独自の記号を追加できるツールもある。代表的なBPMN編集ツールは以下の通り。

  • 無料ツール
    • Visual Paradigm
    • Bizagi Modeler
    • Cawemo
    • Lucidchart
  • 有料ツール
    • IBM Business Process Modeler
    • ARIS Express
    • Signavio Process Manager
    • Software AG Designer

シミュレーションツール

BPMN図に基づいて、業務プロセスの実行をシミュレーションできるツールである。シミュレーションを行うことで、問題点や改善点を発見しやすくなる。代表的なシミュレーションツールは以下の通り。

  • 無料ツール
    • BPMN Sim
    • WoPeD
  • 有料ツール
    • IBM Business Process Modeler
    • ARIS Express
    • Software AG Designer

コラボレーションツール

BPMN図を関係者間で共有・編集するためのツールである。コメント機能やバージョン管理機能など、共同作業を効率化する機能が搭載されている。代表的なコラボレーションツールは以下の通り。

  • 無料ツール
    • Google Drive
    • Dropbox
    • Confluence
  • 有料ツール
    • IBM Business Process Modeler
    • ARIS Express
    • Signavio Process Manager

 その他のツール

  • BPMN図をPDFや画像に変換するツール
  • BPMN図をWebページに公開するツール
  • BPMN図をデータベースと連携するツール

まとめ

BPMNは、業務プロセスを可視化・分析・改善するための国際標準表記法であり、ITリテラシーの高いビジネスパーソンやシステム開発者にとって、業務理解、分析、改善、自動化に不可欠なツールである。

BPMNツールを活用することで、業務プロセスの理解、分析、改善、自動化を促進し、ビジネスの効率化を実現することができる。

BPMNを学ぶのにおすすめの書籍

タイトルとURLをコピーしました