アドウェアとは、広告を表示することで収益を得るソフトウェアである。
一見無害に思えるかもしれないが、その中にはユーザーのプライバシーを侵害したり、システムのパフォーマンスを低下させたりするものも存在する。
アドウェアの仕組み
アドウェアがユーザーのコンピュータに侵入し、活動を開始するまでのプロセスは、巧妙かつ多岐にわたる。
侵入経路
アドウェアは、様々な経路を通じてユーザーのシステムに侵入する。
- バンドルウェア: フリーソフトウェアやシェアウェアにひっそりとバンドルされ、ユーザーが気づかないうちにインストールされることが多い。
- ドライブバイダウンロード: 悪意のあるウェブサイトを訪問するだけで、自動的にダウンロード・インストールされてしまうこともある。
- 偽装: ソフトウェアのアップデートや人気アプリを装い、ユーザーを騙してインストールさせるケースもある。
- スパムメール: 添付ファイルやリンクを通じて、アドウェアを拡散させることもある。
活動開始
システムに侵入したアドウェアは、様々な方法で活動を開始する。
- ポップアップ広告の表示: ウェブ閲覧中に、突然ポップアップ広告を表示させる。
- ブラウザ設定の変更: ホームページや検索エンジンを勝手に変更し、特定のサイトへ誘導する。
- 個人情報の収集: ユーザーの閲覧履歴や検索キーワードなどを収集し、広告配信に利用したり、第三者に販売したりする。
- システムリソースの消費: バックグラウンドで動作し、CPUやメモリなどのシステムリソースを消費することで、コンピュータの動作を遅くする。
- 他のマルウェアのインストール: システムの脆弱性を悪用し、さらに悪質なマルウェアをインストールする足掛かりとなることもある。
アドウェアの例
アドウェアは、その動作や目的によって様々な形態をとる。以下に、代表的なアドウェアの例をいくつか挙げる。
ポップアップ広告型アドウェア
これは最も一般的なタイプのアドウェアである。ユーザーがウェブを閲覧している際に、突然ポップアップウィンドウが現れ、広告が表示される。これらのポップアップは、ブラウザウィンドウを覆い隠したり、閉じることが困難な場合もあるため、ユーザー体験を著しく損なう。
ブラウザハイジャッカー型アドウェア
ブラウザハイジャッカーは、ユーザーの同意なしにブラウザの設定を変更するアドウェアである。具体的には、ホームページやデフォルトの検索エンジンを勝手に変更したり、新しいタブを開くたびに特定のウェブサイトを表示したりする。これらの変更は、ユーザーを特定のウェブサイトに誘導し、広告収入を得ることを目的としている。
追跡型アドウェア
このタイプのアドウェアは、ユーザーのオンライン活動を密かに監視し、収集した情報を広告主に販売する。具体的には、閲覧履歴、検索キーワード、ダウンロード履歴などを追跡する。これらの情報は、ターゲティング広告の配信や、ユーザーの興味・関心に基づいた商品の推奨などに利用される。
偽セキュリティソフト型アドウェア
これは、最も悪質なタイプのアドウェアの一つである。コンピュータがウイルスに感染していると偽りの警告を表示し、ユーザーを騙して有料のセキュリティソフトを購入させようとする。これらの偽セキュリティソフトは、実際には何の保護機能も持たず、むしろコンピュータにさらなる害を及ぼす可能性がある。
バンドル型アドウェア
これは、他のソフトウェアにバンドルされてインストールされるアドウェアである。ユーザーがフリーソフトウェアやシェアウェアをダウンロードする際、インストール画面をよく確認せずに進めてし
アドウェアの対策
アドウェアは、気づかないうちに忍び寄り、私たちのデジタルライフに悪影響を及ぼす。しかし、適切な対策を講じることで、その脅威から身を守ることができる。
事前対策
- 信頼できるソースからのダウンロード: フリーソフトやシェアウェアをダウンロードする際は、公式ウェブサイトや信頼できるサイトを利用する。
- インストール時の注意: ソフトウェアのインストール時には、必ず利用規約やオプション設定をよく確認する。不要なソフトウェアのバンドルインストールを避けるため、「カスタムインストール」を選択し、チェックボックスを慎重に確認する。
- 怪しい広告やリンクはクリックしない: ウェブサイト上やメールに表示される、不審な広告やリンクはクリックしない。
- セキュリティソフトの導入: 定評のあるセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態にアップデートしておく。
- OSやソフトウェアのアップデート: OSやブラウザ、各種ソフトウェアは、常に最新バージョンにアップデートしておく。
感染後の対応
- セキュリティソフトによるスキャン: アドウェアに感染した疑いがある場合は、セキュリティソフトを使用してシステム全体をスキャンし、検出されたアドウェアを削除する。
- アドウェア対策ツールの利用: 特定のアドウェアの削除に特化したツールも存在する。セキュリティソフトで駆除できない場合は、これらのツールを試してみるのも有効である。
- 専門業者への相談: 自力でアドウェアを駆除できない場合は、専門のセキュリティ業者に相談する。
その他の注意点
- ブラウザの拡張機能: ブラウザの拡張機能の中には、アドウェアとして機能するものもある。不要な拡張機能は削除し、信頼できるものだけを残す。
- ファイアウォールの活用: ファイアウォールを有効にすることで、外部からの不正なアクセスをブロックし、アドウェアの侵入を防ぐことができる。
- 定期的なバックアップ: 定期的にシステムのバックアップを取っておくことで、万が一アドウェアに感染した場合でも、データを復旧することができる。
アドウェアへの対策は、「予防」と「早期発見・対応」が重要である。上記のような対策を講じることで、アドウェアの脅威からコンピュータを守り、安全なデジタルライフを送ることができる。
アドウェアとマルウェアの違い
アドウェアとマルウェアは、どちらもコンピュータに影響を与えるソフトウェアであるが、その目的、動作、被害の程度には大きな違いがある。
目的の違い
- アドウェア: 主な目的は広告を表示し、広告収入を得ることである。ユーザーに直接的な危害を加える意図はないことが多いが、迷惑な広告を表示したり、個人情報を収集したりするなど、ユーザー体験を損なう可能性がある。
- マルウェア: ユーザーのコンピュータに危害を加えることを目的とした悪意のあるソフトウェアである。システムの破壊、データの盗難、他のマルウェアのインストールなど、様々な悪質な活動を行う。
動作の違い
- アドウェア: 主にポップアップ広告の表示、ブラウザ設定の変更、個人情報の収集など、比較的穏やかな動作を行う。ただし、システムリソースを過剰に消費し、コンピュータの動作を遅くする可能性もある。
- マルウェア: システムファイルの改ざん、データの暗号化、不正アクセスの実行など、システムに深刻な被害を与える可能性のある動作を行う。
被害の違い
- アドウェア: プライバシー侵害、システムパフォーマンスの低下、迷惑な広告の表示などが主な被害である。
- マルウェア: データ漏洩、金銭的損失、システムの機能不全など、深刻な被害をもたらす可能性がある。
まとめ
アドウェアは、一見無害に見えるが、プライバシー侵害やシステムパフォーマンス低下、セキュリティリスクなどの危険性を孕んでいる。
アドウェアからコンピュータを守るためには、信頼できるソフトウェアのみインストールすること、セキュリティソフトを導入すること、怪しい広告をクリックしないこと、オペレーティングシステムやソフトウェアを常に最新の状態に保つことなどが重要である。
これらの対策を講じることで、アドウェアの脅威からコンピュータを守り、安全にインターネットを利用することができる。
アドウェアの中には、アンインストールが困難なものも存在する。もしアドウェアに感染してしまった場合は、セキュリティソフトを使用して駆除するか、専門業者に相談することを検討してほしい。