COBOLは、1959年に開発された汎用プログラミング言語である。「Common Business-Oriented Language」の略称で、日本語では「コボル」と呼ばれる。
主に、企業や政府機関の業務システム開発に使用されており、金融、会計、人事などの基幹システムをはじめ、社会インフラを支える多くのシステムで活用されている。
COBOLの歴史
COBOLは、1950年代後半にアメリカ国防総省が主導し、複数の企業が共同開発した。当時、様々なコンピュータメーカーで異なるプログラミング言語が使われており、プログラムの移植性や互換性に問題があった。そこで、汎用的なビジネス向けプログラミング言語を開発することで、これらの問題を解決しようとしたのである。
COBOLは発表後すぐに多くの支持を集め、1960年代には世界で最も普及したプログラミング言語となった。その後も改良を重ねながら現在に至り、現在も多くの企業や機関で現役で使われている。
COBOLの特徴
COBOLは、1959年に開発された汎用プログラミング言語であり、現在も金融機関や政府機関などの基幹システムをはじめ、多くのシステムで現役で使われている。その特徴は以下の通りである。
1. 英語に近い自然な記述
COBOLは、英語に近い自然な文法で記述できるため、プログラミング初心者でも比較的習得しやすい。具体的には、以下のような特徴がある。
- 動詞の活用形が少なく、シンプルな文法で記述できる。
- 変数や定数に分かりやすい名前を付けられる。
- 処理の流れを分かりやすく記述できる。
2. データ処理に特化
COBOLは、データ処理に特化した機能が豊富に備えられている。具体的には、以下のような機能がある。
3. 高い移植性
COBOLは、国際標準化されており、様々なコンピュータプラットフォームで動作する。そのため、システムを別のコンピュータに移行する場合でも、プログラムを大幅に変更する必要がない。
4. 豊富なライブラリ
COBOLは、長年にわたって開発されてきたため、豊富なライブラリが用意されている。ライブラリを利用することで、開発時間を短縮したり、複雑な処理を容易に記述したりすることができる。
5. 高い安定性
COBOLは、長年にわたって多くのシステムで稼働しており、高い安定性を誇る。そのため、システム障害が発生しにくいという特徴がある。
6. 保守性が高い
COBOLは、シンプルな文法と豊富なライブラリにより、保守しやすい。そのため、システム改修や修正作業を効率的に行うことができる。
7. セキュリティ対策が充実
COBOLは、データセキュリティに関する機能が充実しており、安全なシステム開発に適している。具体的には、以下のような機能がある。
COBOLの書き方
COBOLプログラムの構成
COBOLプログラムは、以下の4つの部から構成される。
- 識別部: プログラム名などを記述する。
- 環境部: コンパイラや実行環境の設定などを記述する。
- データ部: データ項目を定義する。
- 手続き部: 処理内容を記述する。
サンプルコード
以下は、COBOLで最も基本的なプログラムである「Hello World」プログラムの例である。
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. HELLO-WORLD.
ENVIRONMENT DIVISION.
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 MESSAGE PIC X(15).
PROCEDURE DIVISION.
MAIN PROCEDURE.
DISPLAY 'Hello, World!'.
STOP RUN.
このプログラムは、以下の処理を行う。
MESSAGE
という変数に、「Hello, World!」という文字列を代入する。DISPLAY
文を使用して、MESSAGE
変数の内容をコンソールに出力する。STOP RUN
文を使用して、プログラムを終了する。
COBOLの記述ルール
COBOLには、以下のような記述ルールがある。
- プログラムは、IDENTIFICATION DIVISION、ENVIRONMENT DIVISION、DATA DIVISION、PROCEDURE DIVISIONの順に記述する。
- 各部は、SECTIONやPARAGRAPHなどの節に分割することができる。
- 文は、**.**で区切る。
- 識別子は、英数字とアンダースコア(_)で構成する。
- 変数は、PIC句を使用してデータ型を定義する。
- 制御構文は、IF、GO TO、PERFORM、STOPなどがある。
COBOLの課題
1. 人材不足
COBOLは1959年に開発された古い言語であり、近年では新しい開発案件が減っている。そのため、COBOLに精通したプログラマーが不足している。特に、若い世代のプログラマーは、COBOLよりも現代的なプログラミング言語を学習する傾向にあるため、この問題は深刻化している。
2. 開発コスト
COBOLは、現代的なプログラミング言語に比べて開発コストが高い。これは、COBOLに精通したプログラマーの給与が高いこと、COBOLの開発環境やツールが古いことなどが原因である。
3. モダン化
COBOLは、現代的な開発環境やフレームワークに対応していない。そのため、COBOLで開発されたシステムをWebアプリケーションなどに刷新する場合には、多大なコストと労力が必要となる。
4. セキュリティリスク
COBOLは古い言語であるため、現代のサイバー攻撃に対する脆弱性が指摘されている。具体的には、以下のような問題点が挙げられる。
- バッファオーバーフローなどの脆弱性が存在する。
- 最新の暗号化技術に対応していない。
- セキュリティパッチの提供が終了している。
5. 将来性への不安
COBOLは、今後どのように発展していくのか明確ではない。そのため、COBOLで開発されたシステムを長期的に運用していくことに不安を感じる企業や機関も多い。
COBOLの現在と将来
COBOLは、近年では新しい開発が減っているものの、依然として多くの企業や機関で現役で使われている。これは、COBOLで開発されたシステムが安定稼働しており、置き換えが困難な場合が多いこと、COBOLに精通したプログラマーが不足していることなどが原因である。
近年では、COBOLのコードを現代的なプログラミング言語に翻訳するツールや、COBOLのシステムをWebアプリケーションに刷新する技術なども開発されており、COBOLの延命化に向けた取り組みが進められている。
まとめ
COBOLは、長年にわたって多くの企業や機関で業務システム開発に使われてきた汎用プログラミング言語である。英語に近い自然な記述、データ処理への特化、高い移植性、豊富なライブラリといった特徴を持つ。
近年では新しい開発は減っているものの、依然として多くのシステムで現役で使われており、その延命化に向けた取り組みが進められている。