DFDとは?種類やメリット・活用例をわかりやすく解説

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DFDは、Data Flow Diagramの略で、情報システムにおけるデータの流れを図式化することで、システム全体の構造や機能を可視化する手法である。

システム開発の初期段階で用いられることが多く、システム設計の明確化、要件定義の支援、コミュニケーションの促進などに役立つ。




DFDの歴史と背景

DFDは、1970年代にLarry ConstantineとEdward Yourdonによって提唱された。当時はまだコンピュータシステムの開発が黎明期であり、複雑化するシステムを理解し、設計するためのツールが必要とされていた。DFDは、データの流れという視覚的な表現を用いることで、システム全体の構造を分かりやすく捉えることを可能にした。

DFDの構成要素

DFDは、以下の4つの主要な要素から構成される。

データストア

データストアは、データが格納される場所を表す。データストアは、円筒形または四角形で表される。データストアには、以下の属性が設定される。

  • データストア名:データストアを識別するための名前
  • データの種類:データストアに格納されるデータの種類
  • データ量:データストアに格納されるデータの量
  • 保管方法:データストアの保管方法

処理

処理は、データに対して何らかの操作を行う処理を表す。具体的には、計算、変換、照合などが該当する。処理は、四角形で表される。

処理には、以下の属性が設定される。

  • 処理名:処理を識別するための名前
  • 処理内容:処理が行う具体的な内容
  • 入力データ:処理に必要なデータ
  • 出力データ:処理によって生成されるデータ

データフロー

データフローは、データの移動を表す矢印で表される。データフローは、データストア、処理、外部エンティティの間を流れる。データフローには、以下の属性が設定される。

  • データフロー名:データフローを識別するための名前
  • データの種類:データフローに含まれるデータの種類
  • データ量:データフローに含まれるデータの量

外部エンティティ

外部エンティティは、システム外部の組織や個人を表す。具体的には、顧客、取引先、センサーなどが該当する。外部エンティティは、四角形または楕円で表される。外部エンティティには、以下の属性が設定される。

  • 外部エンティティ名:外部エンティティを識別するための名前
  • 役割:システムとの関係性
  • データの送受信:システムとのデータの送受信内容

これらの要素を組み合わせることで、システムにおけるデータの流れを詳細に表現することができる。

DFDの種類

DFDには、以下の2種類がある。

1. レベル0 DFD

レベル0 DFDは、システム全体の概要を示すDFDである。最も上位レベルのDFDであり、システム全体における主要なデータストア、処理、データフローを表現する。システム全体のコンテキストを理解し、主要な機能を把握するために用いられる。

2. レベル1 DFD

レベル1 DFDは、レベル0 DFDで定義された処理を詳細に分解したDFDである。各処理の詳細な内容やデータの流れを表現する。具体的には、処理内部の細かい手順やデータの変換方法などを記述する。

レベル0 DFDとレベル1 DFDの違い

項目 レベル0 DFD レベル1 DFD
目的 システム全体の概要を示す 処理の詳細を記述する
対象範囲 システム全体 個々の処理
詳細度 低い 高い
用途 システム全体の理解、要件定義 システム設計、詳細設計

レベル1 DFD以降

必要に応じて、さらに詳細なレベルのDFDを作成することもできる。例えば、レベル2 DFDでは、レベル1 DFDで定義された処理をさらに詳細に分解し、具体的なプログラムコードやデータベース設計などを記述することができる。

DFDのメリット

DFDは、ITシステムのデータの流れを可視化することで、以下のようなメリットをもたらす。

システム全体の構造を分かりやすく可視化できる

DFDは、視覚的な図を用いてシステム全体の構造を表現するため、複雑なシステムでも理解しやすくなる。システム関係者間で共通認識を持ちやすくし、コミュニケーションを円滑化することができる。

データの流れを理解しやすくなる

DFDは、データの移動を矢印で表現するため、データの流れを直感的に理解することができる。データの冗長性や漏れなどを発見しやすくなり、システムの効率化や品質向上に役立つ。

システム設計の誤りを見つけやすくなる

DFDを作成することで、システム設計の誤りを見つけやすくなる。例えば、データの流れが矛盾していたり、必要なデータストアが存在しないなど、設計上の問題点を発見することができる。

要件定義を明確化できる

DFDは、システムに必要な機能やデータなどを明確に表現するため、要件定義を明確化することに役立つ。システム開発の初期段階でDFDを用いることで、後の開発工程をスムーズに進めることができる。

開発チームにおけるコミュニケーションを促進できる

DFDは、システム関係者間で共通の認識を持つためのツールとして有効である。DFDを用いることで、開発チームにおけるコミュニケーションを促進し、開発の効率化を図ることができる。

DFDのデメリット

DFDは、ITシステムのデータの流れを可視化するツールとして有効である一方、以下のデメリットも存在する。

複雑なシステムになると、DFD自体が複雑になり、理解しにくくなる

システム規模が大きくなると、DFDに記述する要素が増え、図全体が複雑になり、理解しにくくなる場合がある。特に、詳細なレベルのDFDを作成する場合には、この傾向が顕著になる。

データの流れのみを表現しており、処理の内容や制御の流れは表現できない

DFDは、データの流れに焦点を当てたツールであり、処理の内容や制御の流れを表現することはできない。そのため、システム全体の動作を完全に理解するには、DFDだけでは不十分である。

作成に時間がかかる

DFDを作成するには、システム全体の構造や機能を理解する必要があるため、作成に時間がかかる場合がある。特に、複雑なシステムの場合には、詳細なDFDを作成するには、多くの時間と労力が必要となる。

システム開発の過程で変更が発生する可能性がある

システム開発の過程で、システム要件や設計が変更される可能性がある。DFDは静的な図であるため、変更が発生した場合には、DFDを修正する必要があり、手間がかかる場合がある。

DFDの活用例

DFDは、ITシステムのデータの流れを可視化するツールとして、以下のような場面で活用される。

システム開発

  • システム設計:DFDを用いることで、システム全体の構造や機能を視覚的に表現し、関係者間で共通認識を持つことができる。また、データの流れを分析することで、システムの効率化や品質向上に役立てることができる。
  • 要件定義:DFDを用いることで、システムに必要な機能やデータを明確化し、漏れや矛盾を防ぐことができる。
  • コミュニケーション:DFDを用いることで、システム関係者間で共通の認識を持ち、コミュニケーションを円滑化することができる。
  • テスト:DFDを用いることで、テストケースを設計し、システムの動作を検証することができる。

システム分析

  • 既存システムの理解:DFDを用いることで、既存システムの構造や機能を理解し、問題点を発見することができる。
  • システム改善:DFDを用いることで、既存システムの問題点を発見し、改善策を検討することができる。

教育

  • 情報システムの基礎知識:DFDを用いることで、情報システムの基礎知識を視覚的に理解することができる。
  • システム設計手法:DFDを用いることで、システム設計手法を学習し、実践することができる。

その他

DFDのツール

DFDを作成するためのツールは、以下のようなものがある。

Visio

Visioは、Microsoft社が提供するオフィススイート製品の一つであり、豊富な図形テンプレートと使いやすいインターフェースを備えている。DFD以外にも、フローチャートや組織図など、様々な種類の図を作成することができる。

Astah

Astahは、Change Vision社が提供するUMLモデリングツールであり、DFDを含むUMLの各種図を作成することができる。また、プロジェクト管理機能やコード生成機能なども搭載しており、システム開発の全体工程をサポートする。

Draw.io

Draw.ioは、無料で利用できるオープンソースのオンラインツールであり、DFDやUML図、フローチャートなど、様々な種類の図を作成することができる。インストール不要でブラウザ上で利用できるため、手軽に始められるのが特徴である。

まとめ

DFDは、ITシステムのデータの流れを可視化するツールとして、システム開発の初期段階で広く用いられている。DFDを活用することで、システム全体の構造や機能を明確化し、効率的なシステム開発を実現することができる。

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