コールドスタンバイとは、システムの冗長化手法の一つであり、平常時は電源オフなど停止状態の予備システムを用意し、障害発生時に切り替える方式である。
コールドスタンバイの概要
コールドスタンバイは、システムの可用性を向上させるために用いられる。システム障害が発生した場合、コールドスタンバイシステムに切り替えることで、サービスの停止時間を最小限に抑えることができる。
コールドスタンバイの方式
コールドスタンバイには、以下の2つの方式がある。
手動切り替え方式
手動切り替え方式は、障害発生時に手動でコールドスタンバイシステムに切り替える方式である。具体的には、以下の手順で切り替えを行う。
- 障害発生を検知する
- コールドスタンバイシステムの電源を投入する
- 必要に応じて、コールドスタンバイシステムの設定を変更する
- ネットワークの切り替えを行う
- サービスを起動する
手動切り替え方式は、構築コストが低いというメリットがある。しかし、切り替えに時間がかかるというデメリットがある。また、切り替え作業を誤ると、サービスに障害が発生する可能性もある。
自動切り替え方式
自動切り替え方式は、障害発生時に自動でコールドスタンバイシステムに切り替える方式である。具体的には、以下の手順で切り替えを行う。
- 障害発生を検知する
- 自動切り替え装置がコールドスタンバイシステムの電源を投入する
- 自動切り替え装置が必要に応じて、コールドスタンバイシステムの設定を変更する
- 自動切り替え装置がネットワークの切り替えを行う
- 自動切り替え装置がサービスを起動する
自動切り替え方式は、切り替えが迅速というメリットがある。また、人为的ミスを防ぐことができる。しかし、構築コストが高くなるというデメリットがある。
どちらの方式を選択すべきか
どちらの方式を選択すべきかは、システムの重要度や予算、要件によって異なる。
- システムの重要度が高く、迅速な切り替えが必要な場合は、自動切り替え方式を選択するべきである。
- 予算が限られている場合は、手動切り替え方式を選択するべきである。
- システムの複雑性が高く、手動での切り替えが難しい場合は、自動切り替え方式を選択するべきである。
コールドスタンバイのメリット
コールドスタンバイには、以下のメリットがある。
システムの可用性を向上させることができる
コールドスタンバイシステムを用意することで、システム障害発生時の復旧時間を短縮することができる。これにより、システムの可用性を向上させることができる。
障害発生時の復旧時間を短縮できる
コールドスタンバイシステムは、平常時には停止状態に置かれているため、障害発生時に迅速に切り替えることができる。これにより、サービスの停止時間を最小限に抑えることができる。
サービスの停止時間を最小限に抑えることができる
サービスの停止時間は、企業にとって大きな損失となる。コールドスタンバイシステムを導入することで、サービスの停止時間を最小限に抑え、損失を最小限に抑えることができる。
構築コストが低い
ホットスタンバイと比較すると、コールドスタンバイは構築コストが低い。これは、コールドスタンバイシステムが平常時には停止状態に置かれているため、ハードウェアやソフトウェアなどのリソースを削減できるためである。
運用コストが低い
コールドスタンバイシステムは、平常時には停止状態に置かれているため、電力消費量や冷却コストなどの運用コストが低い。
データ損失のリスクが少ない
コールドスタンバイシステムは、平常時には停止状態に置かれているため、データ損失のリスクが少ない。
セキュリティリスクが少ない
コールドスタンバイシステムは、平常時にはネットワークに接続されていないため、外部からの攻撃を受けるリスクが少ない。
コールドスタンバイのデメリット
コールドスタンバイには、以下のデメリットがある。
切り替えに時間がかかる
コールドスタンバイシステムは、平常時には停止状態に置かれているため、障害発生時に切り替えるまでに時間がかかる。これは、システムの起動やデータの同期などに時間がかかるためである。
データの同期が必要
コールドスタンバイシステムは、定期的に本番システムとデータの同期を行う必要がある。これは、障害発生時に最新の状態に復旧するために必要である。
定期的なメンテナンスが必要
コールドスタンバイシステムは、定期的なメンテナンスを行う必要がある。これは、システムの動作確認やデータのバックアップなどを実施するためである。
構築コストが低い場合がある
コールドスタンバイは、ホットスタンバイと比較すると構築コストが低い場合がある。しかし、システムの規模や複雑性によっては、構築コストが高くなる場合もある。
運用コストが低い場合がある
コールドスタンバイは、ホットスタンバイと比較すると運用コストが低い場合がある。しかし、定期的なメンテナンスなどにコストがかかる場合もある。
データ損失のリスクがある
コールドスタンバイシステムは、データ同期がうまくいかない場合、データ損失のリスクがある。
セキュリティリスクがある
コールドスタンバイシステムは、平常時にはネットワークに接続されていないため、外部からの攻撃を受けるリスクは低い。しかし、システムの起動時に脆弱性が露呈する可能性がある。
コールドスタンバイの代表的サービス
現在は容易にコールドスタンバイシステムを容易に構築できるクラウドサービスが多く提供されている。代表的なサービスは以下の通り。
Amazon Web Services(AWS)
AWSでは、様々なコールドスタンバイサービスを提供している。代表的なサービスは以下の通りである。
Amazon Relational Database Service(RDS)
RDSは、AWSが提供するマネージド型のデータベースサービスである。RDSでは、コールドスタンバイ構成を簡単に構築できる。
Amazon EC2 Auto Scaling
Amazon EC2 Auto Scalingは、EC2インスタンスの数を自動的にスケーリングするサービスである。コールドスタンバイ構成において、メインシステムの負荷に応じて、待機しているEC2インスタンスを自動的に起動することができる。
AWS Elastic Disaster Recovery(DR)
AWS Elastic DRは、災害発生時にAWS環境を復旧するためのサービスである。コールドスタンバイ構成を構築し、災害発生時に待機している環境に切り替えることができる。
Microsoft Azure
Azureでも、様々なコールドスタンバイサービスを提供している。代表的なサービスは以下の通りである。
Azure Backup
Azure Backupは、Azure上のデータをバックアップするためのサービスである。コールドスタンバイ構成において、メインシステムのデータを定期的にバックアップし、必要に応じて復元することができる。
Azure Site Recovery
Azure Site Recoveryは、災害発生時にAzure環境を復旧するためのサービスである。コールドスタンバイ構成を構築し、災害発生時に待機している環境に切り替えることができる。
Google Cloud Platform(GCP)
GCPでも、様々なコールドスタンバイサービスを提供している。代表的なサービスは以下の通りである。
Cloud Storage
Cloud Storageは、GCPが提供するオブジェクトストレージサービスである。コールドスタンバイ構成において、メインシステムのデータをCloud Storageにバックアップし、必要に応じて復元することができる。
Cloud SQL
Cloud SQLは、GCPが提供するマネージド型のデータベースサービスである。Cloud SQLでは、コールドスタンバイ構成を簡単に構築できる。
Cloud Disaster Recovery
Cloud Disaster Recoveryは、災害発生時にGCP環境を復旧するためのサービスである。コールドスタンバイ構成を構築し、災害発生時に待機している環境に切り替えることができる。
上記以外にも、様々なコールドスタンバイサービスが存在する。各サービスの特徴を比較検討し、自社のニーズに合ったサービスを選択することが重要である。
コールドスタンバイとホットスタンバイの違い
コールドスタンバイとホットスタンバイは、システムの冗長化手法として用いられる2つの主要な方式である。
ホットスタンバイは、平常時から本番システムと同様に稼働している予備システムを用意し、障害発生時に切り替える方式である。具体的には、以下の特徴がある。
- 平常時から本番システムと同様に稼働
- 障害発生時に自動で切り替え
- データの同期が不要
- 切り替えが迅速
- 構築コストが高い
どちらも障害発生時にシステムの可用性を維持することを目的としているが、その仕組みには重要な違いがある。
コールドスタンバイとホットスタンバイの違いを表にまとめると以下の通り。
項目 | コールドスタンバイ | ホットスタンバイ |
---|---|---|
平常時の状態 | 停止状態 | 稼働状態 |
切り替え | 手動または自動 | 自動 |
データ同期 | 必要 | 不要 |
切り替え時間 | 時間がかかる | 迅速 |
構築コスト | 低い | 高い |
どちらの方式を選択すべきかは、システムの重要度、予算、要件によって異なる。
- システムの重要度が高く、迅速な切り替えが必要な場合は、ホットスタンバイを選択するべきである。
- 予算が限られている場合は、コールドスタンバイを選択するべきである。
- システムの複雑性が高く、手動での切り替えが難しい場合は、ホットスタンバイを選択するべきである。
まとめ
コールドスタンバイは、システムの可用性を向上させるための手段の1つである。
コールドスタンバイは低い運用コストで可用性コストが向上できる、セキュリティリスクが少ないなどのメリットがある一方で、切り替えに時間がかかる、データの同期が必要などのデメリットもある。
システムの重要度や予算、要件に合わせ、手動・自動切り替え方式やホットスタンバイ方式の中から適切に冗長化対策を選択することが重要である。