ブラウザフィンガープリントとは、Webサイトがユーザーのブラウザに関する情報を収集し、その情報を組み合わせてユーザーを特定するための技術である。
具体的には、ユーザーのブラウザの種類やバージョン、画面解像度、言語設定、インストールされているフォント、プラグインなどの情報を収集する。これらの情報は、ユーザーごとに異なるため、組み合わせることでユーザーを特定することができる。
ブラウザフィンガープリントの種類
ブラウザフィンガープリントとは、Webブラウザーから得られる情報を組み合わせて得たデジタルの「指紋」のことで、個々の利用者を特定するのに使われる。
ブラウザフィンガープリントは、収集する情報の種類によって、大きく分けて以下の3種類に分類される。
ハードウェアベース
ハードウェアベースのブラウザフィンガープリントは、デバイスのハードウェアに関する特徴点を収集する。具体的には、以下の情報が収集される。
ハードウェアベースのブラウザフィンガープリントは、最も精度が高いと言われており、同一のユーザーが異なるデバイスを使用しても、同じ指紋を生成することができる。しかし、デバイスを変更しないと変更できないため、利用者にとって不便になることもある。
ソフトウェアベース
ソフトウェアベースのブラウザフィンガープリントは、Webブラウザやインストールされたソフトウェアに関する特徴点を収集する。具体的には、以下の情報が収集される。
ソフトウェアベースのブラウザフィンガープリントは、ハードウェアベースのブラウザフィンガープリントよりも精度は低くなるが、デバイスを変更しなくても変更できるため、利用者にとって便利である。
行動ベース
行動ベースのブラウザフィンガープリントは、ユーザーの操作や閲覧履歴などの行動に関する特徴点を収集する。具体的には、以下の情報が収集される。
- マウスの動き
- キーボードの入力
- 閲覧したページのURL
- 閲覧したページのコンテンツ
- 閲覧したページの滞在時間
行動ベースのブラウザフィンガープリントは、他の2つの種類よりも精度は低くなるが、ユーザーの興味や関心を推測するのに役立つ。
ブラウザフィンガープリントのメリット
ユーザーの行動分析
ブラウザフィンガープリントを利用することで、ユーザーの行動を分析することができる。例えば、ユーザーがどのWebサイトを訪問したのか、どの製品に興味を持っているのか、といった情報を分析することができる。
この情報は、Webサイトの改善やマーケティングに役立てることができる。例えば、ユーザーの興味や関心に沿ったコンテンツを配信したり、ユーザーの離脱率を減らすための対策を打ったりすることができる。
不正アクセスの防止
ブラウザフィンガープリントを利用することで、不正アクセスを防止することができる。例えば、ユーザーがログインした際に、ブラウザフィンガープリントを取得し、次回ログイン時に比較することで、別の端末からのログインを検知することができる。
この技術は、オンラインバンキングやECサイトなどのセキュリティを強化するために利用されている。
ターゲティング広告
ブラウザフィンガープリントを利用することで、ターゲティング広告を配信することができる。例えば、ユーザーの興味や関心に基づいて、広告を配信することができる。
この技術は、広告主にとっては、より効果的な広告を配信することができるため、メリットがある。一方で、ユーザーにとっては、興味のない広告が表示される可能性があるため、デメリットになる可能性がある。
ブラウザフィンガープリントのデメリット
ブラウザフィンガープリントは、以下のようなデメリットがある。
プライバシー侵害
ブラウザフィンガープリントは、ユーザーの行動をトラッキングするために用いられる。そのため、ユーザーの個人情報や閲覧履歴などが収集される可能性がある。
例えば、ユーザーが特定のWebサイトを訪問した回数や閲覧したページを把握することで、ユーザーの興味や関心を分析することができる。また、ユーザーが特定の製品やサービスを検索したことを把握することで、関連する広告を配信することもできる。
このように、ブラウザフィンガープリントによって、ユーザーの行動や嗜好に関する情報が収集される可能性がある。これは、ユーザーのプライバシー侵害につながる可能性がある。
利便性損失
ブラウザフィンガープリントによって、ユーザーの利便性が損なわれる可能性もある。
例えば、ブラウザフィンガープリントによってユーザーを特定することで、ユーザーに特定のコンテンツや広告を表示することがある。しかし、ユーザーがそのコンテンツや広告を望んでいない場合、利便性が損なわれる可能性がある。
また、ブラウザフィンガープリントによってユーザーが特定されると、不正アクセスやフィッシングなどの被害に遭うリスクが高まる。
ブラウザフィンガープリントの確認方法
専用のツールを使用する
ブラウザフィンガープリントを確認するには、専用のツールを使用するのが最も簡単である。以下に、代表的なツールを紹介する。
- EFF – Cover Your Tracks
- FingerprintJS
- Panopticlick
これらのツールは、ブラウザフィンガープリントに利用される情報 (ユーザーエージェント、画面解像度、インストールされているフォント、プラグイン情報など) を表示し、ユーザーの識別可能性を分析する。
ブラウザの開発者ツールを使用する
ブラウザの開発者ツールを使用しても、ブラウザフィンガープリントに利用される情報を確認することができる。
方法
- ブラウザを開き、確認したいウェブサイトを表示する。
- ブラウザの開発者ツールを開く。
- ネットワークタブを開き、ページロード時に送信されたリクエストを確認する。
- リクエストヘッダーを確認し、
User-Agent
やAccept-Language
などの情報を確認する。
これらの情報は、ブラウザフィンガープリントに利用される可能性がある。
自分でコードを書いて確認する
JavaScriptなどのプログラミング言語を用いて、ブラウザフィンガープリントに利用される情報を取得するコードを書くこともできる。
コード例
const ua = navigator.userAgent;
const screenResolution = `${screen.width}x${screen.height}`;
const fonts = navigator.fonts.enumerateFonts();
const plugins = navigator.plugins;
// 取得した情報を処理する
ブラウザフィンガープリントの対策
もしユーザーがブラウザフィンガープリントによる情報取得をさせたくない場合は、以下の方法がある。
ハードウェアベース
- ブラウザの設定で、ユーザーエージェントをランダム化する
ブラウザの設定で、ユーザーエージェントをランダム化することで、デバイスの種類やバージョンを偽装することができる。これにより、ハードウェアベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。
- プライバシー保護機能を利用する
プライバシー保護機能を利用することで、デバイスのハードウェアに関する情報を非表示にすることができる。これにより、ハードウェアベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。
ソフトウェアベース
- ブラウザの設定で、プライバシー保護機能を利用する
ブラウザの設定で、プライバシー保護機能を利用することで、Webブラウザやインストールされたソフトウェアに関する情報を非表示にすることができる。これにより、ソフトウェアベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。
- ブラウザの設定で、CookieやJavaScriptを無効にする
CookieやJavaScriptを無効にすることで、ソフトウェアベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。ただし、CookieやJavaScriptを無効にすると、一部のWebサイトや機能が利用できなくなる可能性がある。
行動ベース
- プライバシー保護機能を利用する
プライバシー保護機能を利用することで、ユーザーの操作や閲覧履歴などの情報を非表示にすることができる。これにより、行動ベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。
- ブラウザの設定で、CookieやJavaScriptを無効にする
CookieやJavaScriptを無効にすることで、行動ベースのブラウザフィンガープリントを回避することができる。ただし、CookieやJavaScriptを無効にすると、一部のWebサイトや機能が利用できなくなる可能性がある。
ブラウザフィンガープリント対策は、ハードウェアベース、ソフトウェアベース、行動ベースのそれぞれの対策を組み合わせることで、より効果的になる。
まとめ
ブラウザフィンガープリントは、Webサイトがユーザーを特定するための便利な技術である。しかし、その一方で、ユーザーのプライバシー侵害や利便性損失につながる可能性がある。
ブラウザフィンガープリントによるプライバシー侵害や利便性損失を防ぐためには、上記のような対策を講じることが重要である。