ARPとは?仕組みなどをわかりやすく解説

ARP(Address Resolution Protocol)は、イーサネットなどのLAN(ローカルエリアネットワーク)において、IPアドレスMACアドレスに変換するプロトコルである。

各端末は固有のMACアドレスを持ち、ARPIPアドレス宛てのパケットを、そのMACアドレスを持つ端末に届ける役割を担っている。




ARPの構成要素

ARPテーブル

ARPテーブルは、ARPによって取得したIPアドレスMACアドレスの対応関係を一時的に保存しておくためのキャッシュである。ARPテーブルを使用することで、同じ宛先への通信を行う際に、毎回ARPリクエストを送信する必要がなくなり、通信効率が向上する。このテーブルは、ARPリクエスト・レスポンスのやり取りによって動的に更新する。

ARPキャッシュ

また、ARPテーブルの情報をより高速にアクセスするために、ARPキャッシュが使用される。ARPキャッシュは、最近解決されたIPアドレスとMACアドレスの対応関係を一時的に保持する。これにより、頻繁に通信する相手に対するARPリクエストを削減できる。

ARPの仕組み

ARPは、IPアドレスとMACアドレスの対応関係を解決するために、以下のステップで動作する。

1. ARPリクエストのブロードキャスト

 送信元デバイスは、通信したい相手のIPアドレスを知っているが、MACアドレスを知らない場合、ARPリクエストパケットブロードキャストする。このパケットには、送信元デバイスのIPアドレスとMACアドレス、そして通信相手のIPアドレスが含まれる。ネットワーク上の全てのデバイスがこのARPリクエストを受信する。

2. ARPリプライの送信

 ARPリクエストを受信した各デバイスは、パケット内のIPアドレスを自身のIPアドレスと比較する。もし一致すれば、そのデバイスは自身のMACアドレスをARPリプライパケットに格納し、送信元デバイスに直接(ユニキャスト)で送信する。一致しないデバイスはARPリクエストを破棄する。

3. ARPテーブルへの登録と更新

ARPリプライを受信した送信元デバイスは、通信相手のIPアドレスとMACアドレスのペアをARPテーブルに登録する。ARPテーブルは、IPアドレスとMACアドレスの対応表であり、次回同じ宛先に通信する際にARPリクエストを送信する必要をなくし、通信効率を向上させる。ARPテーブルのエントリは一定時間後に期限切れとなり、ARPテーブルは動的に更新される。

ARPは、このようにしてIPアドレスからMACアドレスを取得し、ネットワーク上でのデータ通信を可能にする。この仕組みはシンプルだが、ネットワークの基礎を支える重要な役割を果たしている。

ARPの用途

ARPは、IPアドレスとMACアドレスの対応関係を解決するプロトコルであり、以下の用途で利用される。

1. IPパケットの送信

 ネットワーク上でのデータ通信は、IPアドレスを宛先として行われる。しかし、物理的なネットワーク層では、MACアドレスを宛先としてデータを送信する必要がある。ARPは、IPアドレスに対応するMACアドレスを特定することで、IPパケットを正しい宛先に送信することを可能にする。

2. ネットワークの構築と管理

 ARPは、ネットワークデバイスの検出やネットワークトポロジの把握にも利用される。ARPリクエストをブロードキャストすることで、ネットワーク上に存在するデバイスを検出し、そのIPアドレスとMACアドレスの対応関係を把握することができる。

3. ルーティング

 ルーターは、異なるネットワーク間でパケットを転送する役割を担う。ルーターは、ARPを使用して、次のホップのMACアドレスを特定し、パケットを正しい方向に転送する。

4. セキュリティ

ARPは、セキュリティ対策にも利用される。ARPスプーフィングと呼ばれる攻撃では、攻撃者が偽のARPリプライを送信することで、通信を傍受したり、改ざんしたりする。ARPテーブルの静的登録やARPセキュリティソフトウェアの利用など、ARPの仕組みを理解することで、このような攻撃を防ぐことができる。

ARPは、ネットワーク通信の基礎を支える重要なプロトコルであり、その用途は多岐にわたる。ARPの仕組みを理解することで、ネットワークの動作原理を深く理解し、より安全かつ効率的なネットワーク運用が可能になる。

ARPのコマンド

ARPテーブルの表示や操作には、以下のコマンドが役立つ。

  • arp -a: 現在のARPテーブルの内容を全て表示する。 例:arp -a -> IPアドレス、MACアドレス、インターフェースなどが一覧で確認できる。
  • arp -d <IPアドレス>: 指定したIPアドレスに対応するARPエントリを削除する。 例:arp -d 192.168.1.100 -> IPアドレス「192.168.1.100」のエントリを削除する。
  • arp -s <IPアドレス> <MACアドレス>: 指定したIPアドレスとMACアドレスの対応関係をARPテーブルに静的に追加する。 例:arp -s 192.168.1.100 aa-bb-cc-dd-ee-ff -> IPアドレス「192.168.1.100」とMACアドレス「aa-bb-cc-dd-ee-ff」を紐づける。

これらのコマンドは、ネットワークのトラブルシューティングや設定変更に活用できる。ARPテーブルを確認することで、通信の問題の原因を特定したり、IPアドレスとMACアドレスの対応関係を管理したりできる。

まとめ

ARPは、IPベースのネットワークにおいて、端末間の効率的な通信を可能にする重要なプロトコルである。IPアドレスとMACアドレスの変換を自動化することで、端末はLAN上で互いに接続し、データを交換できるようになる。ARPのコマンドを適切に活用することで、ネットワークのトラブルシューティングや管理をより効率的に行うことができるだろう。

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