ワンタイムパスワード(OTP)とは、1度限りの有効なパスワードのことである。
ワンタイムパスワードのメリット
ワンタイムパスワードのメリットは、以下のとおりである。
パスワードリスト攻撃やブルートフォース攻撃に強い
パスワードリスト攻撃とは、過去に流出したパスワードリストを利用する攻撃方法である。ワンタイムパスワードは、1度限り有効であるため、パスワードリスト攻撃の対象にならない。
ブルートフォース攻撃とは、パスワードの組み合わせを全て試す攻撃方法である。ワンタイムパスワードは、6桁または8桁の数字で構成されることが多いため、ブルートフォース攻撃を困難にする。
二要素認証の要素として利用できる
二要素認証とは、パスワードに加えて、もう1つの要素を組み合わせることで、認証の強度を高める方法である。ワンタイムパスワードを利用する二要素認証では、パスワードに加えて、ワンタイムパスワードを入力することで、認証を行うことができる。
導入や運用が容易
ワンタイムパスワードは、ソフトウェア方式とハードウェア方式の2種類がある。ソフトウェア方式は、スマートフォンやパソコンなどのデバイスにソフトウェアをインストールして、ワンタイムパスワードを生成・表示する方法である。ハードウェア方式は、専用のハードウェアデバイスを使用して、ワンタイムパスワードを生成・表示する方法である。
ワンタイムパスワードの流れ
ワンタイムパスワードの流れは、以下のとおり。
- ユーザーがログインする。
- 認証サーバからOTPを取得する。
- ユーザーが取得したOTPを入力する。
- 認証サーバが入力されたOTPと、ユーザーIDや時刻などの情報を照合する。
- 一致すれば認証成功、一致しなければ認証失敗となる。
OTP認証は、パスワードの盗難やなりすましなどの攻撃を防止する効果が期待できる。また、多要素認証の1つとして用いることで、セキュリティをさらに高めることができる。
ワンタイムパスワードの種類
ワンタイムパスワードは、大きく分けて、ソフトウェア方式とハードウェア方式の2種類がある。
ソフトウェア方式
ソフトウェア方式は、スマートフォンやパソコンなどのデバイスにソフトウェアをインストールして、ワンタイムパスワードを生成・表示する方法である。
ソフトウェア方式のワンタイムパスワードの例としては、以下のようなものが挙げられる。
- Google Authenticator
- Microsoft Authenticator
- Authy
ソフトウェア方式のワンタイムパスワードは、手軽に導入・運用できるため、多くの企業や個人で利用されている。
ハードウェア方式
ハードウェア方式は、専用のハードウェアデバイスを使用して、ワンタイムパスワードを生成・表示する方法である。
ハードウェア方式のワンタイムパスワードの例としては、以下のようなものが挙げられる。
- YubiKey
- RSA SecurID
- Gemalto SafeNet OTP
ハードウェア方式のワンタイムパスワードは、デバイスの紛失や盗難に強いというメリットがある。しかし、ソフトウェア方式よりもコストがかかるというデメリットがある。
ソフトウェア方式とハードウェア方式の比較は、以下の表の通りである。
項目 | ソフトウェア方式 | ハードウェア方式 |
---|---|---|
導入・運用の容易さ | 容易 | やや困難 |
デバイスの紛失や盗難への強さ | 弱い | 強い |
コスト | 安い | 高い |
ワンタイムパスワードの種類は、利用環境や予算などに合わせて選択することが重要である。
ソフトウェア方式は、手軽に導入・運用できるため、個人で利用する場合や、コストを抑えたい場合に適している。
ハードウェア方式は、デバイスの紛失や盗難に強いため、企業や、セキュリティを重視する個人で利用する場合に適している。
ワンタイムパスワードの活用例
インターネットバンキング
インターネットバンキングでは、通常のパスワードに加えて、ワンタイムパスワードを入力することで、不正ログインを防ぐことができる。
例えば、三井住友銀行のインターネットバンキングでは、通常のパスワードに加えて、SMSで送信されるワンタイムパスワードを入力することで、ログインを行うことができる。この場合、パスワードが流出しても、ワンタイムパスワードがなければ、不正ログインを防ぐことができる。
クラウドサービス
クラウドサービスでは、通常のパスワードに加えて、ワンタイムパスワードを入力することで、アカウントの乗っ取りを防ぐことができる。
例えば、Google Workspaceでは、通常のパスワードに加えて、Google Authenticatorで生成されるワンタイムパスワードを入力することで、ログインを行うことができる。この場合、パスワードが流出しても、ワンタイムパスワードがなければ、アカウントの乗っ取りを防ぐことができる。
スマートフォンのログイン
スマートフォンのログインでは、通常のパスワードに加えて、ワンタイムパスワードを入力することで、スマートフォンの盗難や紛失に備えることができる。
例えば、Androidでは、通常のパスワードに加えて、画面ロックのパスワードまたは指紋認証と、Google Authenticatorで生成されるワンタイムパスワードを入力することで、ロックを解除することができる。この場合、スマートフォンが盗難や紛失されても、ワンタイムパスワードがなければ、ロックを解除できないため、個人情報の流出を防ぐことができる。
社内システムへのアクセス
社内システムへのアクセスでは、通常のパスワードに加えて、ワンタイムパスワードを入力することで、社内ネットワークのセキュリティを高めることができる。
例えば、多くの企業では、社内システムへのアクセスに、通常のパスワードに加えて、ICカードや指紋認証などの生体認証を組み合わせている。この場合、ワンタイムパスワードを追加することで、さらにセキュリティを高めることができる。
ワンタイムパスワードの主要なアプリ
ワンタイムパスワードのアプリは、数多くリリースされている。その中から、主要なアプリをいくつか紹介する。
Google Authenticator
Google Authenticatorは、Googleが提供しているソフトウェア型OTPアプリである。トークン方式のOTPにも対応している。OTPの生成は、認証サーバとの通信によって行われる。OTPの履歴表示機能やOTPの共有機能、アプリのロック機能などを備えている。
Microsoft Authenticator
Microsoft Authenticatorは、Microsoftが提供しているソフトウェア型OTPアプリである。Google Authenticatorと同様に、トークン方式のOTPにも対応している。OTPの生成は、認証サーバとの通信によって行われる。OTPの履歴表示機能やOTPの共有機能、アプリのロック機能などを備えている。
Authy
Authyは、Authy Inc.が提供しているソフトウェア型OTPアプリである。トークン方式のOTPにも対応している。OTPの生成は、認証サーバとの通信によって行われる。OTPの履歴表示機能やOTPの共有機能、アプリのロック機能などを備えている。また、クラウド上にOTPを保管することができるため、端末を紛失してもOTPを復元することができる。
Razer Keypad
Razer Keypadは、Razerが提供しているトークン型OTPアプリである。トークン方式のOTPのみに対応している。OTPの生成は、トークンに内蔵された時計や発行回数などの情報を用いて行われる。また、Razer製のキーボードやマウスと接続することで、キーボードやマウスのボタンでOTPを入力することができる。
ワンタイムパスワードのデメリット
ワンタイムパスワードのデメリットは、以下のとおりである。
デバイスの紛失や盗難に弱い
ワンタイムパスワードは、ソフトウェア方式の場合はスマートフォンやパソコンなどのデバイスにインストールして、ハードウェア方式の場合は専用のハードウェアデバイスを使用して生成・表示する。そのため、デバイスの紛失や盗難によって、ワンタイムパスワードを生成できなくなる可能性がある。
定期的な更新
ワンタイムパスワードは、通常は30秒から60秒ごとに更新される。そのため、更新を忘れると、ワンタイムパスワードが有効期限切れとなり、認証できなくなる可能性がある。
コスト
ハードウェア方式のワンタイムパスワードは、ソフトウェア方式よりもコストがかかる。例えば、Google Authenticatorなどのソフトウェア方式のワンタイムパスワードは、無料で利用できる。一方、YubiKeyなどのハードウェア方式のワンタイムパスワードは、数千円から数万円程度のコストがかかる。
まとめ
ワンタイムパスワードは、二要素認証の要素の1つとして利用することで、認証の強度を高めることができる。インターネットバンキングやクラウドサービスなどのオンラインサービスで利用されることが多い。